ξ*゚听)ξの居場所は…のようです



789 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/01/28(日) 21:41:32.65 ID:gAhmOmx1O
投下してみる
『ξ*゚听)ξの居場所は…のようです』



淡い桃色──詩的に言うなら春色──のカーディガンと白いタイトスカート。
柔かな金色の巻き毛を、まだ冷たい風に揺らしながら、女は頻りに腕時計を覗き込んでいる。

ξ*゚听)ξ「待ち合わせ場所、間違えてないわよね…」

少しばかり不安そうに口にして、クリーム色の壁にもたれた。
恐らく、このヴィップ市で一番「待ち合わせの指定場所」として活用されているであろう、駅前の時計台。
今も様々な男女が、携帯や時計に視線を走らせている。
ある者は緊張した面持ちで。またある者は、込み上げて来る笑みを無理矢理に押し込めながら。

ξ*゚听)ξ「──手、冷たい」

女は呟く。

──春は名のみの、風の寒さや

ふいに、昔習った歌が頭をよぎった。
鴬の声なんて、もう長い間聞いていない。

791 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/01/28(日) 21:42:30.75 ID:gAhmOmx1O
ξ*゚听)ξ「(もう10年になるんだ)」

故郷の町を離れてから。
何処までも広がる田園風景や、夕日に染まる海。風の音。夜の匂い。
そして。

素直になれないまま離れた、好きだった男の子。

ξ*゚听)ξ「懐かしい…な」

その時、ブランド物のバッグに入れていた携帯電話が、流行歌のメロディを鳴らしながら震えた。
慌てて開く。

『もうすぐ着くお( ^ω^)』

どこか『あの子』に似た可愛らしい顔文字と、甘えたような癖のある語尾。
女は思い出を振り払うように、音を立てて携帯を閉じ、
凜とした目で雑踏を見据えた。
今生きている都会。
何処からか高らかに、鴬の声が聞こえた気がした。





  ←戻る ↑home