第五話  前編

2 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:07:09.83 ID:DuoPWeoZ0
(´<_` )「ついに、ついに完成したぞ兄者!」

翌日。
四月の始まり。

昼過ぎ、弟者の叫び声がこだまする。

( ´_ゝ`)「!?」

(´<_` )「使われもしないかわいそうな和室を俺の手で改造してやった!」

じゃーんとばかりにご開帳。
そこには、天井からぶら下がるゾウやキリンを象ったモビールと、ただ放置されたとしか思えない毛布が一枚。

(´<_` )「ザ、ベビールーム!」

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「どうだ兄者。岡本太郎もビックリなこのデザインは!」

(´,_ゝ`)「……プッ」

(´<_` )「!?」

( ´_ゝ`)「ばーぶっ」

(´<_` )「鼻で笑うかなあ」

第五話 はじまり

3 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:07:53.74 ID:DuoPWeoZ0
('、`*川「でも正直、あなた一人で育てるのはムリだと思うのよね」

(´<_` )「チャイムぐらい鳴らしてくださいアホサスさん」

押しかけてきたペニサス。
どうも、「今日は午前診療だけなんだよね」ということらしい。
上着代わりと思われる白衣をベビールーム(仮)に放った。

兄者はそこでお昼寝中。

(´<_` )「それで、どういう意味ですかアホサス」

('、`*川「ついに呼び捨てかい? まぁいいけど。
     ほら、キミのお兄さんのことだよ」

中途半端に開かれたふすまの向こうを見やるペニサス。

('、`*川「キミには当然子育ての知識が無い。
     でも私にはあるのさ」

(´<_` )「でもギコさんもあるみたいですけどね。知識が」

('、`*川「なんとな?」

(´<_` )「つまりあなたの手を借りなくても問題は」

('、`*川「なおよし! 明日から通ってやろう、病院を放棄することも辞さない構え」

(´<_` )「まじめくさった口調を混ぜなくても」

4 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/18(日) 00:08:18.40 ID:QJNhmtAcO
wktk

5 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:08:19.62 ID:DuoPWeoZ0
('、`*川「大体ギコさんはいつもお疲れでしょ?
     彼にさらなる労働を課すなんて真似、私にはできないね」

(´<_` )「俺にはできますから問題なし」

('、`*川「キミの嗜虐的な精神にはほとほと呆れるな!」

(´<_` )「あなたの利己的な精神には負けますよ」

('、`*川「あはははははははは」(´<_` )

空虚な笑い。

ペニサスのグーが弟者の顔面に伸びようとした瞬間、都合良く玄関のチャイムが鳴り響いた。

(´<_` )「誰か来たようですよ、本当はSのアホサス」

('、`*川「何いってんの? どっちかっていうと私は松本だよ?」

(´<_` )「Sですね」

('、`*川「Mだよね」

(´<_` )「S……はいはい、どちらさま」

ちょうど扉を開けたとき、アホサスの絶叫が轟く。

(*゚∀゚)「ちわー、三河屋でー」

('、`*川「エ・ム!!」

6 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/18(日) 00:08:26.15 ID:aEkjMrYeO
始まったwktk!wwwwww

7 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:08:51.05 ID:DuoPWeoZ0
(*゚∀゚)「……」

('、`*川「あ」

(´<_` )「乙女なんて種族は昭和時代に滅びたようです」

(*゚∀゚)「ボケ……つぶされた」

(´<_` )「関西だなあ」

('、`*川「誰、この人」

アホサスが憮然とした表情で両手にビニール袋を提げた来客を指さす。

(*゚∀゚)「プリンセス天功もびっくりな妖艶オーラ、美少女つーとは私のことさ!」

('、`*川「叶姉妹よりは森三中にいそうなタイプ」

(*゚∀゚)「そーゆーアンタはこまどり姉妹かなっ?」

('、`*川「あはは、冗談の上手い人だ」

(*゚∀゚)「あははははははははは」('、`*川

そしてはじまるデスマッチ。
グーが飛ぶ。
パーが乾いた音を響かせる。
チョキが眼をつぶす。

(´<_` )「あほー、あほー。どっちもあほー」

8 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:09:27.63 ID:DuoPWeoZ0
(´<_` )「で、何の用です?」

(*゚∀゚)「よくぞきいてくれたっ。いやはや、キミがいることはお見通しだったよ!」

(´<_` )「そうだよ俺が犯人だよ!」

('、`*川「何の?」

(*゚∀゚)「今日はほら、国民的行事の日じゃん?
     そーゆー日は、TWO-SEEをおやすみすることになってるんだよっ!?」

(´<_` )「国民的行事……今日が? 何かありましたっけ」

(*゚∀゚)「バレンタインデー!」

(´<_` )「……」

('、`*川「……嘘! チョコレート作ってないよ!?」

(*゚∀゚)「うっそー! 正解はエイプリルフールでしたー!
     あっはははははは」

(´<_` )「……」

('、`*川「ウザいなー」

(´<_` )「中途半端なボケをしないでください」

(*゚∀゚)「にゃははのはっと」

9 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:09:55.89 ID:DuoPWeoZ0
(´<_` )「まああなたが店を休むのは勝手です。
       しかしそれとここに来る理由がいまいち繋がりません」

(*゚∀゚)「国民的行事の日は、一家揃ってパーティーを開くことにしてるんだよっ!
     我が家のしきたり、みたいな感じで」

(´<_` )「それで、ここに?」

(*゚∀゚)「おとーさんが言ってたさ」

(´<_` )「……」

ギリリ、と歯ぎしり。
企画人はギコで間違いないだろう。

(´<_` )「一家のことは一家で勝手にやればいいじゃないですか」

(*゚∀゚)「さーんえーるでぃーけーい!!
     つまりそういうことさ」

(´<_` )「どういうことさ?」

('、`*川「なるほど……そういうことか」

(´<_` )「アホサスは黙りなさい」

(*゚∀゚)「そーだ、黙りなさい」

('、`*川「むー」

10 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:10:22.32 ID:DuoPWeoZ0
('、`*川「え、じゃあ……ちょっと待ってよ」

(*゚∀゚)「待たない」

('、`*川「あ、そう」

(´<_` )「その、両手に持っているビニール袋は何か関係します?」

(*゚∀゚)「食材。今日は鍋料理ですよー」

(´<_` )「また微妙な時期に微妙な食べ物を」

(*゚∀゚)「おいしいですよー。鳥鍋ですよー。
     必要とあらば美少女のよだれも混入させますよー」

(´<_` )「青酸カリだけは勘弁してください」

('、`*川「おーい」

(*゚∀゚)「カセットコンロと酒はしぃとおとーさんが持ってくるよ」

(´<_` )「ああ、酒ですか。久しく飲んでません」

(*゚∀゚)「おやおや、十五の夜だねえ」

('、`*川「あのー」

11 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/18(日) 00:10:47.34 ID:urH2k/N30
このペースは・・・支援

12 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:10:48.39 ID:DuoPWeoZ0
('、`*川「ちょっと聞いて良い?」

(*゚∀゚)「ダメ」

('、`*川「あなた、ギコさんの娘か何か?」

(*゚∀゚)「うん。長女、或いは次女」

(´<_` )「何その微妙な身分は」

(*゚∀゚)「一応双子なんだけどさー、どっちがさきに産まれたか教えてくれないんだよ」

(´<_` )「それはアンビリーバボー」

(*゚∀゚)「まあ忘れてるだけだろうけど」

('、`*川「んなことはどうでもいいよ! 
     ……ふっふっふ。そうかそうか。ギコさんのねえ」

突然ベビールーム(仮)に入り、ふすまを固く閉じるアホサス。

(´<_` )「?」

13 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:11:30.25 ID:1uaXDYgiO
支援

14 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:12:12.06 ID:DuoPWeoZ0
(*゚∀゚)「……」

(´<_` )「……」

( ;_ゝ;)「ひぎゃあぁぁあぁぁあぁぁあぁあぁあ」

(*゚∀゚)「!」(´<_` )

……

(*゚∀゚)「……誰の声?」

(´<_` )「あ、知りませんでしたっけ。
       実はかくかくしかじか」

(*゚∀゚)「へえ。結構一緒にパーティー開くからよく知ってるよ。
     赤ちゃんになっちゃったかあ」

(´<_` )「そりゃあもう、可愛いですよ」

(*゚∀゚)「どれくらい?」

(´<_` )「デビュー当時のグレート義太夫が神木隆之介になったぐらい」

(*゚∀゚)「それはもう、人智を超えた変貌だね」

珍妙なやりとりをしていると、再びふすまが開いた。

そこに、いかにも理知的な女性を装ったアホサスが立っていた。

15 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:12:15.31 ID:QJNhmtAcO
支援

16 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/18(日) 00:12:19.26 ID:aW4YH1zs0
wktk

17 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:12:46.78 ID:DuoPWeoZ0
('、`*川「コホン」

(´<_` )「さっきの、兄者の泣き声……というより悲鳴はなんだったんだ?」

('、`*川「つーさん」

(*゚∀゚)「へ?」

('、`*川「どうもこんにちは。ハーバード総合病院の院長、ペニサス・セガールです」

(*゚∀゚)「は、はい」

('、`*川「実は……大変申し上げにくいのですが」

(*゚∀゚)「ほう」

('、`*川「あなたのお父さんは、ガンです」

(*゚∀゚)「!」

(´<_` )「一般庶民の住宅で何がハーバードだ」

(*゚∀゚)「そ、それで……父の命は!?」

(´<_` )「なに、信じてる系?」

(*゚∀゚)「キミは黙ってて!」

つーはあまつさえ涙を目に溜めている。
アホだ。いや、バカだ。

18 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:13:13.62 ID:DuoPWeoZ0
('、`*川「脳みそガンがけっこう進行しています」

(´<_` )「せんせー、のーみそってガンになるんですかー?」

('、`*川「このままではお父さんの命は長くないでしょう」

(* ∀ )「そ、そんな……」

('、`*川「率直な話、この重病を治せるのは……日本広しといえど私だけでしょうな」

(´<_` )「ハーバードのくせに」

(* ∀ )「せ、先生! おとーさんを、おとーさんを助けてあげてください!」

('、`*川「うむ、それには必要な書類にサインしてもらわなければなりません」

そういって取り出したのは電気店のチラシ、の裏。

('、`*川「ここにお父さんの住所を書いてください」

ふてぶてしくそんなことを言う。

(* ∀ )「は、はい……」

19 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:13:36.75 ID:DuoPWeoZ0
(´<_` )「うわぁ、最低だ」

もはやあきれ果てている弟者にアホサスが耳打ちする。

('、`*川「エイプリルエイプリル」

(´<_` )「近づくなアホ菌がうつる。うつったら絶対自殺する」

('、`*川「小学生か」

フルフルと震える手でつーが住所を書き記す。

(* ∀ )「こ、これを」

('、`*川「よろしい。お父さんは、私が必ず治してさしあげよう」

(* ∀ )「せんせぇ……」

泣きつくつーをよしよししてやるアホサス。
そして、彼女には見えないように、弟者に向かってVサイン。

(´<_` )「みんなみんな、死ねば良いんだ」

20 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:14:09.05 ID:DuoPWeoZ0
騒動が終息すると同時に、玄関の扉が勢いよく開け放たれた。

( ,,゚Д゚)「ハッローゥ」

(*゚∀゚)「お、おとーさん!!」

( ,,゚Д゚)「え、何、何?」

いきなり抱きついてくるつーに戸惑いを隠せない、重病のギコ。

(* ∀ )「おとぉさぁん」

( ,,゚Д゚)「相変わらずわけのわかんない……あ、オトージャ、事情は聞いた?」

(´<_` )「ええ、はっきりと」

( ,,゚Д゚)「それならいいわ……あ、そっちの人は?」

('、`*川「ペニサスです」

(´<_` )「アホサスです」

( ,,゚Д゚)「アホサスね。アンタも一緒にどう?」

('、`*川「え、いいんですか?」

(* ∀ )「ぜひ、どうぞ!」

('、`*川「そこまで言うのなら……」

21 名前:愛のLIP戦士[] 投稿日:2007/02/18(日) 00:14:09.29 ID:+mSKZi7BP
なんだか懐かしいね

22 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:14:37.06 ID:DuoPWeoZ0
(´<_` )「よかったね、アホサス」

親子の会話に盛り上がっている片隅で、アホサスと弟者は密談中。

(´<_` )「相手も負けず劣らずのアホで」

('、`*川「この私にかかればちょろいもんよ」

(´<_` )「で、いつネタばらしするの?」

('、`*川「うーん……。
     ま、頃合いを見計らって」

( ,,゚Д゚)「あ、そういえばアニージャは元気?」

(´<_` )「ああ、今向こうの部屋で寝てますよ」

( ,,゚Д゚)「顔見させてもらうわねえ」

らんららんとばかりにベビールーム(仮)へ向かうギコ。

そしてすぐに、満面の笑みを湛えて戻ってくる。

(´<_` )「どうでした?」

( ,,゚Д゚)「寝てたわ。なんか、悪夢に魘されてるみたい」

('、`*川「……」

23 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/18(日) 00:15:00.30 ID:QJNhmtAcO
支援

24 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:15:01.03 ID:1uaXDYgiO
支援

25 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:15:15.57 ID:DuoPWeoZ0
( ,,゚Д゚)「さ、そろそろ鍋の準備を始めましょうか。
      アホサス、手伝って」

言われて弟者は壁時計を見る。
午後六時。
まだしぃは来ない。

アホサスがいそいそと台所に向かう。

(´<_` )(さて、兄者のこと、か)

今はまだ大丈夫だ。何せ、春休みだから。
しかし、高校が始まればそうも言ってられない。
ギコは夜に仕事があるから昼間は寝てなければならない。
アホサスとて一応医者だ。

そうなった場合、誰が母親役を買って出るのか。

(´<_` )(目下のところ、一番の問題だな……)

和室に入り、時々顔を歪めながら眠り込んでいる兄者を見下ろす。
アホサスから受け取った服は、よだれでひどく汚れている。

(´<_` )「あ、そうだ。
       兄者にも晩ご飯の準備をしないとな」

26 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:15:42.89 ID:DuoPWeoZ0

三十分ほどして。

( ,,゚Д゚)「なーべパーティー!」

(*゚∀゚)「でも、主食はビール!」

('、`*川「いえーい」

食卓の真ん中でクツクツと音を立てる鍋。
鶏肉やら菊菜やら白菜やら。
鍋料理のレギュラーメンバーといったところか。

弟者以外の人間の前にはビールジョッキ。
そして、テーブルの上や下には誰が飲むんだと言いたくなるほどのビール瓶が置かれている。


(*゚∀゚)「しぃが来ないね」

( ,,゚Д゚)「ま、そのうち来るでしょ」

ピンポーン

('、`*川「来ましたね」

( ,,゚Д゚)「チッ」

(´<_` )「え?」

27 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:16:09.51 ID:DuoPWeoZ0
(*゚ー゚)「おじゃましまーす……」

(*゚∀゚)「おぉ、しぃ!」

(*゚ー゚)「あ、つーだ……」

(*゚∀゚)「何、その嫌そうな顔は」

(*゚ー゚)「あんた、TWO-SEEて名前やめたんでしょうね?」

(*゚∀゚)「相変わらず細かいなあ。そのうち肖像権料? みたいなのは払うよ」

( ,,゚Д゚)「ケツの穴が小さいわね」

(*゚∀゚)「お詫びに……ホラ、蝋燭三本あげるから」

(*゚ー゚)「あ、ありがと」

(´<_` )「それ、何に使うんですか?」

(*゚ー゚)「え」

28 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:16:09.51 ID:urH2k/N30
支援

29 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:2007/02/18(日) 00:16:28.18 ID:DuoPWeoZ0
(´<_` )「何に使うんですか?」

(*゚ー゚)「いや、あの、ええと、その」

(´<_` )「な、に、に、つ、か、う、ん、で」

('、`*川「オトージャオトージャ」

(´<_` )「はい?」

('、`*川「すでに酔ってる?」

(*゚ー゚)「ふええ……」

しぃの涙と弟者のS成分と赤い蝋が入り交じり。
鍋パーティーの始まりが告げられた。

・・・

・・



第五話(前) おしまい
第五話(後) へ続く






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