第四話



2 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/15(木) 22:53:32.51 ID:feK2lAkW0
('、`*川「ギコさんについて詳しく教えて」

(´<_` )「ゲイ」

('、`*川「他には?」

(´<_` )「ホモ」

('、`*川「あえて付け加えるなら?」

(´<_` )「同性愛者」

('、`*川「なるほど……わかったわ」

(´<_` )「それはよかった」

('、`*川「私とあの方の間には、なんの障害も無いわけね」

(´<_` )「いっそのこと死ねばいいのに」

('、`*川「なんとな!?」

(´<_` )「昇格しますか? スーパーアホサスに昇格しますか?」

('、`*川「現状維持でいいわよ!」

第四話 はじまり。

6 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/15(木) 22:54:30.05 ID:feK2lAkW0
('、`*川「ところで、他に何か要るものは無いの?
     昔の名残が家の押し入れに保管されてるんだけど」

(´<_` )「さしあたり乳母車とカラカラするやつとモビール。
       ついでにコロンコロンするやつとか口にくわえるヤツとかがあればなおよしですね」

('、`*川「乳母車は……あったかなあ。かさばるから捨てちゃったかも。
     カラカラするやつとかはあったと思う。
     まぁ、帰ったら探してみる」

(´<_` )「もうあれですね。太っ腹っていうか超肥満体ですね」

('、`*川「うるさいな」

(´<_` )「それにしても、やけに関わろうとしますね」

('、`*川「まー、あれじゃない。子供は人類みんなの宝じゃない」

(´<_` )「どうでもいいですけど」

('、`*川「どっちかっていうとSだよねキミ」

風呂場から声が聞こえてきた。
嬌声と表現するのは間違いだろう。
しかし、嬌声だ。

7 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/15(木) 22:55:49.72 ID:feK2lAkW0
( ,,゚Д゚)「ああ、疲れた……。オトージャ、私帰るわね」

(´<_` )「あ、同棲じゃないんですか」

( ,,゚Д゚)「そうよ。私はすぐにでもしたかったけど、アニージャが許してくれないの」

(´<_` )(さすがヒモ。微妙な距離感を大切にしているな)

( ,,゚Д゚)「それじゃあねぃ。また、夕方に来るわぁ」

ギコはポーチを手にフラフラと家を出て行く。
兄者があられもない姿になった現状、特に気兼ねする必要もないと思う。
しかし、これが彼の日常サイクルなのだろう。

('、`*川「それじゃあ、私もそろそろ……」

(´<_` )「ああ、帰るんですか?」

('、`*川「まあね。そろそろ診察始まるし」

(´<_` )「ストーカー?」

('、`*川「聞いてないよね、キミ」

8 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/15(木) 22:56:25.59 ID:feK2lAkW0
パタリ、と扉が閉まって静寂が舞う。

(´<_` )「よかったなー、兄者。
       あのおデブなおねーさんがいろいろ貢いでくれるぞー」

( ´_ゝ`)「Zzz」

兄者が未だ寝こけていることを確認。
当初、兄者を上手く育てられるか心配で仕方なかった。
しかし周囲の人間、ペニサスやギコにはどうやら経験があるらしい。
安堵に包まれる。

(´<_` )(母者……俺、上手くやっていけそうだよ……)

そして弟者は立ち上がり、キッチンへ向かう。
突如襲った空腹。
そういえば昨日の夕飯は抜いてしまったのだ。
それすら忘れて寝こけてしまった自分に非があるのだが。

テレビを付けると黒人がドアップで映し出された。
と思ったらみのもんただった。

9 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/15(木) 22:56:51.10 ID:feK2lAkW0
(´<_` )「……ほとんど何も無いな」

冷蔵庫を開いてみて唖然とする。
飲料用と思われる水とパンが少々。
それに酒とつまみ類、それだけしか入ってないのだ。

ギコに奢ってもらったりしていたのだろう。
まったく、良いご身分である。
ヒモのくせに、大して顔も良くないくせに。

とりあえず食パンを一枚拝借。

評論家の小難しい議論を耳にしつつ、弟者は簡単な朝食をとることにした。

(´<_` )「なんか、やっと俺は都会に来たって感じがするな
       この、食パンの耳あたりが違う」

束の間の休息。
弟者はそれを、十分満喫するつもりなのだ。

10 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/15(木) 22:57:17.46 ID:feK2lAkW0
十数分経過して。

( ´_ゝ`)「……んー……」

(´<_` )「おう、起きたか、兄者」

( ´_ゝ`)「う……」

早々に目に涙を溜め始める兄者。

(´<_` )「お、落ち着け。何が欲しいんだ?
       ミルクか? オムツか? 竹島か!?」

( ;_ゝ;)「うぎゃああぁあああああぁああぁあぁああぁあ」

泣くのは赤ん坊の仕事。
そんなことを言い出した輩を、弟者は心底恨んでやろうと思った。

何が仕事だ、他人に迷惑かけやがって。
でも可愛いから怒れないだろ、畜生。

(´<_` )「しばらく待て、ミルク用意するから、な?」

( ;_ゝ;)「う……うぇぇ……」

12 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/15(木) 22:57:43.53 ID:feK2lAkW0
更にその十数分後。

( ´_ゝ`)「だぁ、だあ!」

(´<_` )「ご機嫌麗しゅう、今朝は猪木の物まねですか」

やはり一人で赤ん坊と接するのは無理だ。
弟者はいよいよ悟っていた。

(´<_` )(改めて、母者の偉大さが身にしみてわかる)

(´<_` )(……あの盛り上がった上腕二頭筋は、俺たちのせいかもしれないな)

( ´_ゝ`)「ばぁぶぅ、ばぁぁ」

(´<_` )「さて、兄者もご機嫌になったし。
       勉強するかな……」

弟者は自身のバッグから筆記用具と問題集を取り出した。

合格が決定したとき、高校から配布されたシロモノである。
普段大して宿題もしない弟者だが、こればかりはしないといけないという使命感に襲われていた。

どーせ数ヶ月もたたないうちに、授業中平気で寝るような野郎に成り下がるというのに。

13 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 22:58:49.52 ID:feK2lAkW0
(´<_` )「……その前に」

弟者がリビングを見回した。
そういえば、昨日から他の部屋を覗いてないではないか。

(´<_` )「この部屋に住むにあたって、空間構成その全てを理解することは至極重要である」

もっともらしい理由をつけて、弟者は探検することにした。

まずはリビングの隣。
ふすまを開くと、そこに六畳ばかりの和室があった。
使われている形跡がない。
つまらないのですぐに閉めた。

次の部屋。
こちらは同じく六畳程度の洋室……のはずだが、見事に服置き場になっていた。
壁と壁を繋ぐ紐から垂れ下がっている様々な制服。
弟者はそれらから連想される職業を口にしてみる。

(´<_` )「パイロット、看護婦、小学生、赤ん坊……ってなんだ、ここに赤ちゃん用の服があるじゃないか。
       でもちょっと大きすぎるな」

なんとなく吐き気を催したので閉めた。

最後の部屋。
玄関の傍にある、木製の扉に閉ざされた場所である。
そこで弟者は、見てはいけないものを見てしまった。

14 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 22:59:15.27 ID:feK2lAkW0
            ζ
        _,,旦,_
       ./ -ω-ヽ 
       l      l
        `'ー---‐´


(´<_` )「……」

黙って扉を閉める。

(´<_` )「……」

(´<_` )「……なんだ?」

大きさは、おそらく弟者の腰ぐらい。
目があった。口みたいなものもあった。
ついでに、頭に湯飲みを乗せていた。
そして寝ている。

(´<_` )「……ゆぅ、えむ、えぇ……」

15 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 22:59:45.07 ID:feK2lAkW0
戦慄。
あんなものが存在して良いのだろうか。
可愛すぎるではないか。

(´<_` )「……あれか、兄者と競り合おうとする宇宙からの使者か」

気になる。
いつからあの場所に鎮座していたのか。
そこは、兄者の私室として使われているであろう部屋だった。
ベッドや小型テレビ、ノートパソコンなどが所狭しと設置されている。
そんな、雑然とした空間のちょっとしたすきまに、彼は座ったまま眠り込んでいたのだ。

(´<_` )「ダニの進化系……なはずはないか。
       しかし、どうしろというんだ」

そんなおり、声が聞こえた。

「セイヤ-」

(´<_` )「!!」

それは明らかに、あの物体が居た場所から聞こえてくる。

(´<_` )「ゆぅ……えふ……おぉ……」

16 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 23:00:20.08 ID:feK2lAkW0
たまらず、弟者は再び扉を開いた。
そこに。

              _,,..,,,,_
             ./ ・ω・ヽ
              ヽ(゚Д゚)ノ
               )_) ))
               ( (
             l ̄ ̄ ̄~l
              `'ー---‐´
(´<_` )「……は?」

(Д゚)「セ、セイヤー……」

(´<_` )「あの、どちらさん?」

突如物体を分離させて登場したのは小人。
腰が艶めかしく動いている。

/ −ω−ヽ「ぽ……」

そして、本体までもが起動を始める。

(´<_` )「つーか、切り離されても生きてるのか」

17 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 23:01:03.53 ID:feK2lAkW0
/ ・ω・ヽ「ここはどこだぽ?」

(´<_` )「ようこそ、ビバリーヒルズへ」

/ ・ω・ヽ「嘘だぽ。ここは確かメゾン・ド・Gだぽ」

(´<_` )「知ってるなら聞かないでもらおうかミュータント」

(Д゚)「ミ、ミズセイヤー」

/ ・ω・ヽ「中の人が死にかけてるぽ!」

(´<_` )「中の……人?」

/ ・ω・ヽ「こいつの名前ぽ」

もしも手があれば、今にも倒れそうになっている満身創痍の小人指さしていただろう。

(´<_` )「中の人って名前?」

/ ・ω・ヽ「そうだぽ
      とにかく水を持ってきて欲しいぽ!!」

(´<_` )「……さっきの湯飲みはどうしたの?」

/ ・ω・ヽ「なんのことだぽ?」

18 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 23:01:34.06 ID:feK2lAkW0
わけがわからない……。
そう思いつつも、弟者は台所から水を持ってきてやる。

(Д゚)「フ、フッカツセイヤー!!!」

途端に、腰の動きが一層激しくなる。

(´<_` )「HGも廃れ始めたこの時代に、こいつは何を求めているのか」

/ ・ω・ヽ「そんなことはどうでもいいぽ。とりあえず、中の人が元気になったよかったぽ」

(Д゚)「セイヤー!」

(´<_` )「どうでもいいですが、あんた方は語尾に何かつけないと喋れないの?」

(Д゚)「セ、セイヤー……」

/ ・ω・ヽ「いや、ぶっちゃけ普通に喋れる」

(´<_` )「……」

(´<_` )(こいつら……結構イライラさせてくれるな)

20 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 23:01:58.62 ID:feK2lAkW0
(´<_` )「はい、事情聴取はじめまーす」

/ ・ω・ヽ「お手柔らかにお願いするぽ」

(´<_` )「まず、お名前をどうぞ」

/ ・ω・ヽ「ぽだぽ」

(´<_` )「ぽだぽさん、と」

/ ・ω・ヽ「違うぽ! ぽ!」

(´<_` )「ああ、ぽさんね。種族は?」

/ ・ω・ヽ「闇属性悪魔族ぽ」

(´<_` )「滅びのバーストストリーム!」

/ ・ω・ヽ「ずっとぽレのターン!」

(´<_` )「本当は?」

/ ・ω・ヽ「それが……よくわかんないぽ」

/ ・ω・ヽ「どうやら記憶喪失らしいぽ」

(´<_` )「ふうん、ずいぶんナメた口叩いてくれますねえ。お兄さん怒っちゃうよ?」

21 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 23:02:21.78 ID:feK2lAkW0
/ ・ω・ヽ「本当だぽ!」

(´<_` )「えっと、そこの人……人?」

(Д゚)「セイヤー」

(´<_` )「名前は?」

(Д゚)「ナ、ナカノヒトセイヤー」

(´<_` )「記憶喪失?」

(Д゚)「……イロイロオボエテナイセイヤー」

(´<_` )「半角読みにくいね」

/ ・ω・ヽ「中の人いじめちゃだめぽ! 大体中の人は……」

(Д゚)「ダ、ダイジョウブセイヤー」

/ ・ω・ヽ「人が喋ってるときに喋るなぽ!」

(Д゚)「ゴ、ゴメンナセイヤー……」

(´<_` )「人じゃないような、もうどうでもいいような」

22 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 23:02:47.06 ID:feK2lAkW0
/ ・ω・ヽ「とにかくそんな感じだぽ」

(´<_` )「ふうん、どうしたもんだか」

/ ・ω・ヽ「必要とあれば今日からペットになってあげるぽ」

(´<_` )「口をガムテープで封じれば結構アリだよな」

しかしこいつはいったい何者なのか。
もふもふしているあたりはネコっぽい。
しかし四肢が見えないぐらい小さい(或いは無い)し、何より人間の言葉を喋る。
そのうえ、人を飼っているのだ。

(´<_` )「いつからここに?」

/ ・ω・ヽ「あんまり覚えてないぽ。いつの間にか、ここで寝てたぽ」

(´<_` )「無意識で家宅侵入とは良い度胸だな」

/ ・ω・ヽ「まぁそんな日常もありだと思うぽ」

23 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 23:03:22.67 ID:feK2lAkW0
/ ・ω・ヽ「ところで、どうするつもりだぽ?」

(´<_` )「……」

/ ・ω・ヽ「ま、一応邪魔はしないぽ」

(´<_` )「……ま、いいか。お前は何も食べないのか?」

/ ・ω・ヽ「微妙だぽ。食べなくても一応大丈夫だぽ」

(´<_` )「生物かどうかも怪しくなってきたな」

(´<_` )「まぁ邪魔にならないならここにいてもいいだろうが……
      問題は、だ」

(Д゚)「オナカガスイタセイヤー……」

/ ・ω・ヽ「大変だぽ! 中の人が餓死しちゃうぽ!」

(´<_` )「そいつは問題だろう。養わないといけない」

/ ・ω・ヽ「そんなことどーでもいいから、早く食べ物を分け与えるぽ!」

24 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 23:04:14.68 ID:feK2lAkW0
仕方ないので冷蔵庫からもう一枚パンを拝借。
そして中の人にちぎって渡す。

(Д゚)「カンゼンフッカツセイヤー!」

(´<_` )「こいつとお前は一心同体なのか?」

/ ・ω・ヽ「いや、ぶっちゃけいなくても大丈夫」

(Д゚)「!!」

/ ・ω・ヽ「まーいわゆるしゅじゅー関係だぽ」

(´<_` )「格差社会を体現しているわけか」

/ ・ω・ヽ「……じゃ、そろそろ寝てもいいかぽ?」

(´<_` )「何が『じゃ、』なの?」

/ ・ω−ヽ「眠いんだぽ。もう一眠りしたいぽ」

(´<_` )「まぁ……いいかもしれない」

/ −ω−ヽ「それじゃ」

瞬間、中の人の姿が消える。
正しくは、ぽの身体の中に戻ったのだ。

25 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 23:04:31.61 ID:feK2lAkW0
(´<_` )「いや、待て。寝かせといて良いのか?」

結局、かわいさに負けてしまったわけだ。
すやすやと寝こけるぽは、まるで兄者のようでもある。
口を閉じたぽは、見ているだけでもほほえましい。
というか正直、喋っているときもまた、別のかわいさを醸しているような気がする。

(´<_` )「まぁ……いいか」

育てる対象が一つ増えただけだ。
それに、こっちはあまり手がかかりそうにない。
中の人とやらは……未知数だが。

弟者はリビングに戻る。
そしていそいそと、勉強を始めた。

(´<_` )「……兄者、勉強を教えてくれ」

( ´_ゝ`)「Zzz」

26 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:2007/02/15(木) 23:05:12.35 ID:feK2lAkW0
一日は緩やかに過ぎ去った。
昼時にはペニサスが、様々な荷物を手にやってきた。
乳母車は無かったという。それなら買いに行かないといけないなーと、弟者は考えた。
しかし今日は、どうにも動くのが面倒である。昨日の反動だろうか。
持ってきてくれたモビールを天井に吊す気力さえも無い。
だから明日に持ち越すことにした。
彼女は特に兄者の部屋……つまり、ぽが居る部屋を積極的に覗こうとはしないので安心。

夕刻には、すっかり体力回復したギコがやってきた。
彼は兄者の顔を見るとすぐに出勤してしまった。

彼もまた、兄者の部屋を見ようとはしない。
兄者から禁じられているのだろう。

そんな感じで。
一日は、ゆったりと終幕を迎えた。

・・・

・・



第四話 おしまい





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