552 名前:1/6[] 投稿日:2007/02/13(火) 22:11:50.27 ID:esKJeiss0
空には月が光っている。
夜の闇を眩い光で照らす月だが、それ以上の光を放つ場所があった。
そこはビルやコンビニ、ファーストフード店などが立ち並び
ネオンサインや街灯の光などで溢れており、月の光が無くとも闇に覆われる事はない。
そんな光で溢れている場所とは違い、闇に包まれている路地裏を走る少年がいた。

(;^ω^)「ハァ、ハァ」

その少年は学生服着て、背中にはリュックサックを背負っている。
呼吸は荒く、髪の毛は乱れ、全身は止め処なく出る汗のせいで湿っていた。
彼の名は内藤ホライゾン。親しい友人からはブーンと呼ばれているVIP高校の学生だ。

(;^ω^)「い、一体此処はどこなんだお…
       ショボン達と遊んだ帰りに近道の路地裏に入っただけなのに…」

ブーンは走るのをやめ呼吸を整えながら路地裏から顔を出し辺りを見渡す。
路地裏とは違い変わることなく光で満ち、道路には車が溢れている。
ごく普通の光景だが一つだけ不可解な所があった。
――人がブーン以外いないのだ。

553 名前:2/6[] 投稿日:2007/02/13(火) 22:13:11.66 ID:esKJeiss0
(;^ω^)「や、やっぱりこの辺もそうかお…」

ブーンは落胆してその場に立ち尽くした。
既に周囲をある程度探索したがやはりどこにも人は見つかってはいなかったのだ。
そしてこの都市の周りには壁の様な物があり、外には出られない様になっていた。

(;´ω`)「もう…どうしたらいいんd

(;゜ω゜)「!!」

ブーンが呟きを終える直前にそいつは道路を挟んだ向かい側に現れた

 ( ゚∋゚)「グゥ…ガ…ギャ…」

全身筋肉質で緑色の肌を持ち2メートル近く有ろうかという巨体。
指先から伸びている鋭利で長い爪。
頭に生える二本の角。
顔には二つの目と長いクチバシがあり、まるで猛禽類のようだ。

 ( ゚∋゚)「ゴギャャャャャャャャャャャ!!」

化け物は咆哮を上げた。
そして一歩、また一歩道路にある車を腕で軽々と投げ飛ばしながらこちらに走ってきた。

555 名前:3/6[] 投稿日:2007/02/13(火) 22:15:11.16 ID:esKJeiss0
(;゜ω゜)「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ブーンは振り返り持ち物を捨てて無我夢中で走り出した。
疲れで足が悲鳴を上げてるが構わず走る。
ゴミ箱を避け、金網をよじ登り走った。
走って走って、走りぬいた先でブーンの身は凍りついた。
ついた先はビルの壁で前と左右を囲まれた行き止まりだったのだ。
後戻りしようと振り返った先には化け物が1メートルほどの距離にいた。

(;;ω;)「く、来るなぁぁぁぁぁぁ!!!」

ブーンの様子は実に滑稽だった。
着ていた学生服を脱ぎ振り回しながら後ずさりをしているのだ。
顔は汗や涙、鼻水といった物で汚れ
更に失禁して股間の部分を濡らし足元には水溜りを作っていた。

 ( ゚∋゚)「ギュルルルル…」

一方、化け物は涎を垂らしながら一歩、又一歩とブーンに歩み寄って来る。
まるでブーンが怯える様を楽しむかの様なゆっくりとした歩みで。

ブーンの背に壁が当たる。もはや逃げ場は無かった。
学生服を振り回すのを止め、ブーンは尻をつく。
化け物はもう目の前だ。

556 名前:4/6[] 投稿日:2007/02/13(火) 22:17:10.47 ID:esKJeiss0
(;;ω;)「ここで僕の人生も終わりかお…」

ブーンは目を瞑った。
頭の中には友と過ごした短い学園生活が走馬灯のように現れていた。

 ( ゚∋゚)「ゴギャャャャャャャャャャャ!!」

化け物は咆哮と同時に目の前のブーンに右腕を振り上げた。

(  ω )(ドクオ、ショボン、ツン、クー…さよならだお…)

だがブーンに腕が振り下ろされる事は無かった。
代わりに何かが壁に刺さる音と共にブーンの前方で何かが落ちた。
少しの間を置いて

( ゚∋゚)「ギャャャャャャャャャャャ!!」

化け物が再び咆哮を上げた。
だが先ほどの咆哮と違いそれは怒りで満ちていた。

(;´ω`)(一体、どうしたんだお…)

静かに目を開けた。
――目の前には右腕を切り落とされ苦しみ、のた打ち回る化け物の姿があった。

(;゜ω゜)「何が・・・起きたんだお…」

周囲を見渡すと自分の頭の近くに茶色で両刃の手斧が刺さっていた。
触れようとするとその斧は砂となって消えた。

558 名前:5/6[] 投稿日:2007/02/13(火) 22:18:54.44 ID:esKJeiss0
(    )「どうやら間に合ったみたいだね」

逃げる為走ってきた道から声が響いた。
暗くて顔は見えないがその声の主をブーンは知っていた。
声の主は苦しむ化け物を見て

(    )「その斧はサービスだから、落ち着いて欲しい」

そう言いながらこちらに歩いてきた。
近づくにつれて顔が見えてくる
それは忘れもしない友のしょぼくれ顔。

(;゜ω゜)「しょ、ショボン!!」

(´・ω・`)「やぁ、助けに来たよ」

ショボンは化け物の脇を通りブーンに近づく。
そしていつもの困ったような笑顔で

(´・ω・`)「大丈夫かい?」

(;゜ω゜)「だ、大丈夫だお!
       けどショボン此処はどこなんだお!?
       今投げた斧は何だお!?
       そしてあのばk…ショボン後ろ!」

ショボンの背には化け物が立ち、彼が振り返ると同時にその左腕を振り下ろした。
次の瞬間、その左腕は二人を裂く事無く宙を舞った。
そして化け物の咆哮。

561 名前:6/6[] 投稿日:2007/02/13(火) 22:21:54.81 ID:esKJeiss0
(;゜ω゜)「!!」

(´・ω・`)「やれやれ・・・、突然出すと脆いんだよなぁ…」

ブーンの目の前には下から切り上げるポーズのショボンが立っていた。
その右手には片刃が消失した砂塗れの斧を持って。
ショボンは斧を投げ捨て呟いた。

(´・ω・`)「ブーン下がっていて。
      君の疑問にはこいつを始末してから答えるよ」

ショボンはそう言うと地面に右手を翳した。
すると、その部分の地面が腰の辺りまで盛り上がり、
そこから先ほど見た手斧が噴出した。

ショボンは斧を掴むとそれを化け物に突き出して静かに言い放った。

(´・ω・`)「じゃあ、注文を聞こうか」

( ゚∋゚)「グゥ・・・ギャ・・・ゲェェェェェェ!!」

562 名前:7/7[] 投稿日:2007/02/13(火) 22:23:11.30 ID:esKJeiss0
すいません。数え間違えてました。

両腕を切り落とされた化け物はショボンに背を向け走り出す。
だが、ショボンが左手を翳すと同時に化け物の足元に深い蟻地獄のような物が出現し落ちた。
中央には巨大な穴があるが、暗すぎて内部は見えなかった。

化け物は必死に這い上がろうとするが、もがけばもがくほど体は沈んで行った。
穴には後僅かで落ちそうだ。

(´・ω・`)「二本目斧の代金を払って貰わないとね。
       ―――自らの命で」

( ゚∋゚)「ギョァァァァァァァ!! シャ…キ…

化け物は言い終える前に穴に落ちた。
ショボンはそれを確認すると翳していた左手を閉じた。
すると蟻地獄は消え、初めから何も無かったかのように
元の状態に戻っていた。

(´・ω・`)「又のご来店を…」

ブーンはそんな友の姿を只見てる事しかできなかった。
ショボンの右手の斧は鈍く輝き続けていた――。



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