920 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/06(火) 03:49:10.91 ID:rflDwUWcO
(;^ω^)「そんな訳でノコノコついて来ちゃったお」
('A`)「安心しな、俺には阿部清明とアリの血が流れてる」

「モハメドの方な」と付け加えながら、ドクオは家をしげしげと眺めていた。
天気はこの日も生憎の曇り空。一昨日の体験が、ブーンの頭から放れなかった。
今にも吐き出しそうな中、重い空気が敷地から溢れている気がした。

(;^ω^)「あうあう……ドクオ、これはヤバいかも分からんね」
('A`)「ブーンが言った人影ってのは見えねぇな」
('A`)「よし、聞き込みすっか」

嫌な予感ばかりが、ブーンの脳裏を過ぎる。
が、嫌な汗を拭き、聞き込みに行けば、そこは流石に現役の訪問販売のプロ。
巧みな話術に、近所の奥さんもヌルヌルである。
たちまち情報を聞き出すのだった。

( ^ω^)「で、やっぱりあの家は留守だったお」
('A`)「旅行中か?」

立ち話もなんだから、と近くのファミレスに来ていた。
人には余り聞かれたくない話なので、小声である。

( ^ω^)「どうやら違うらしいお」
('A`)「と言うと?」
( ^ω^)「分からないけど、どうやら家族全員家から出てないらしいお」
('A`)「どーゆー事だ?」

921 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/06(火) 03:49:53.98 ID:rflDwUWcO
( ^ω^)「多分自殺したんだお……とパイオツカイデーな伊藤さんが言ってたお」
('A`)「良いですねーパイオツカイデーですねー、と言う事かぁ……」
('A`)「でもそうなると警察が動くはずだろ?」

ドクオの言う事も最もだった。自殺ならば警察が動いているはず。
なのにあそこは無人のまま、静寂に包まれている。

( ^ω^)「そこだお……そこが気になるお」
('A`)「じゃあ、警察と一緒に行くか。知り合いがいんだよ、警察に」
( ^ω^)「なにそのご都合展開」

2人は水を一気に飲み込むと、店を出た。
暖房は恋しかったが、知り合いのいる警察へと急いだ。

(´・ω・`)「で、ノコノコついて来ちゃったのかい?」
( ^ω^)「そうだお、付添人が欲しいんだお」
(#´・ω・`)「ドクオ! 性懲りもなくッ!」

ショボンは一頻り呆れると、今度は怒り出した。
どうやら怒りの矛先はドクオらしい。睨み付けたまま喋らない。
一方、ドクオはというと、

('A`)「あーいとぅいまてーんwwww」
(#´・ω・`)「君は反省ってものを知らないみたいだね…あれだけ僕を苛めといて」
('A`)「で…苛めってなんだ? 食えるのか?」
(#´・ω・`)「食えねーよ!」

922 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/06(火) 03:50:52.71 ID:rflDwUWcO
2人の関係は幼稚園に始まり、大学を卒業するまで同じ関係だったらしい。
だが、ショボンの積年の恨みもドクオには通じず、今に至ったというわけだ。

( ^ω^)「で、行ってくれるのかお? ビチグソ野郎」
(´;ω;`)「話したのか!? そうか、話したのか!」
('A<)ゞ「テヘヘ」
(´;ω;`)「行くよ…行きゃ良いんだろ!」

昔何があったのかは分からないが、ショボンは泣いたまま上司に謝っていた。
そうして、家についた頃には、日も暮れ、辺りにはいよいよ夜の闇が広がっていた。
月も星の光すらも雲が遮っている。
こんな夜では、出ない物まで出そうな、そんな気さえする。

(´・ω・`)「ここかい? ここらへんで自殺何て聞いた事ないけど」
(;^ω^)「でも、ブーンは確かに聞いたお」
('A`)「おい、花壇の下で鍵ハケーン」
(´・ω・`)「じゃあ調べてみるか」

ショボンの問いに、ブーンはコクリと頷いた。
改めて見上げた家は、闇の中、禍々しくそびえていた。

(´・ω・`)「じゃあ…開けるよ」

そろりと鍵を差し込みゆっくりと回す。
カチリと音がし、玄関の扉が開いた。
そこで、ブーンは心底扉を開けた事を後悔した。

923 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/06(火) 03:52:15.39 ID:rflDwUWcO
3人は思わず鼻を摘んだ。家の中には、生臭い空気が漂っていた。

(;´・ω・`)「これは…起きててもおかしくないね、殺人」
(;^ω^)「怖がらせないで欲しいお」

ショボンの『殺人』と言った言葉が、やけにリアルに聞こえる。
それこそ、闇の中に誰かが潜み、現在進行形で起りそうな気さえする。
だというのに、ドクオは構わず家に入ると、土足のまま上がり込んだ。

('A`)「おじゃまじゃまじゃま〜」
(;^ω^)「ふざけるにも程があるお」
(´・ω・`)「まぁ、慣れだよね」
('A`)「おい何してんだよ! 早く行くぞ」

2人は顔を見合わせ溜め息を吐くと、ドクオの後を追った。
ハンドライトの光を巡らせ、追いつくとドクオが立ち止まっていた。
何故か、顔面が蒼白になっている。嫌な考えばかりが頭の中を埋め尽くした。

('言`)「これは……ブーン、ガチだ」
(;^ω^)「何が……!?」
(;´・ω・`)「ちょ……ガチってこれ……死体?」

誰も、ショボンの問いに答えたくなかった。認めたくなかったのだ。
ドクオが立っていたのは、リビングの入口で、そこから直ぐ先にあった。
骨と皮ばかりの身体で俯せている、赤ん坊の姿が。

924 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/06(火) 03:54:37.21 ID:rflDwUWcO
(;´・ω・`)「これは通報しないと……」
('A`)「その前にここを出た方が良さそうだな……」

先程まで強気だったドクオも、今はハッキリと怯えている。温度の無い恐怖が、腹の奥底から涌いていた。

(;゚ω゚)「でも……もう遅いお」
(;´・ω・`)「え?」

ブーンが呟いたその瞬間、凄まじい音と共に家全体が揺れ始めた。
四方の壁が軋み、近くの棚が揺れ、家全体が悲鳴ともつかない叫び声を上げる。
なのに、地面が揺れる感覚がない。

(;'A`)「地震じゃ……ねーよな」
(;´・ω・`)「みたいだね」
(;゚ω゚)「逃げるお」

ブーンの声を皮切りに、我先にと玄関へと走り出した。数m先の玄関に猛烈な勢いで駆け寄ると扉を掴んだ。

(;゚ω゚)「助かるお!?」

叫びながら扉を開け、倒れ込む様に玄関を出た。
ドクオもショボンも同様に、足下がおぼつかないが、どうにか玄関に出た。
数分ぶりだというのに、外の空気が懐かしく感じる。
ようやく落ち着きを取り戻すと、ブーンの後ろでへたり込む2人に声をかけようと振り向いた。

( ^ω^)「大丈夫だったか……お……」

扉の直ぐ内側、サッシの向う側、黒い塊が立っていた。
一瞬目があった気がした瞬間、ブーンの意識が遠のいた。
その直前、ブーンはあの影の正体が分かった。全身を覆う、髪だと。

926 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/06(火) 03:55:31.53 ID:rflDwUWcO
次の日、ブーンは警察署で目を覚ました。
寝ぼけ眼で辺りを見回すと、自販機の前にドクオがいる。

( ^ω^)「ドクオ…ここ何処だお?」
('A`)「あ? 起きたか…ここは警察署だよ」

缶コーヒーを握るドクオの顔には、隈があった。
眠れなかったのだろうが、無理もない、とブーンは思った。

(´・ω・`)「ブーンも起きたのか」
( ^ω^)「お世話さまだお」
(´・ω・`)「少し調べてね、昨日の事が分かったんだ」

起き抜けに、こんな話題を振るショボンが意地悪く思えた。
同様に、ドクオの顔も曇る。が、それも無視し話始めた。

(´・ω・`)「結果から言えば、あの家は心中しようとしたんだ」

その家には、直ぐには返せない様な借金があったらしい。
そんなある日、一家の大黒柱が亡くなった事を切っ掛けに、近所で家族を見掛けなくなった。
だが、夜逃げした、という噂も実しやかに囁かれると、元々近所付き合いが無いのも手伝って―――

(´・ω・`)「忘れ去られていったみたいだ」
( ^ω^)「………」
('A`)「………」

ショボン以外口を開くものはいず、話が途切れると辺りはシーンと静まり返った。

(´・ω・`)「で、こっからは僕の想像」

927 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/06(火) 03:57:26.04 ID:rflDwUWcO
そう前置きし、再び語り始めた。

(´・ω・`)「その家は、亡くなった父親も含め、4人家族だったらしいんだ」

構成は、父親、母親、小学生の長男に、まだ赤ん坊の次男。
全員が眠っているであろう深夜。
母親はまず、大量の薬を飲み、長男から殺そうとした。
だがその時、予想外に長男が叫び声をあげてしまった。
それに驚いた赤ん坊が―――

(´・ω・`)「良いかい、これはあくまで推察だが、赤ん坊は逃げたんだ」
(´・ω・`)「信じられるかい? あそこの家は、寝室が2階にあったんだ、なのに」
( ^ω^)「赤ん坊は一階のリビング……」
(´・ω・`)「だが、長男も放って置けない」
('A`)「そうこうしてる内に母親がアボン…か」
( ^ω^)「もしかして凶器は……?」

何か言おうとして、途中で止めた。
それを最後に、誰も口を開こうとはしなかった。
今は何を言ってもこの空気は変えられない。
全員がその事を理解していた。

窓から覗ける空には、いつまでも覆い被さる様に、分厚い雲が横たわっていた。
まるで、全てを浄化してくれそうな太陽を隠す様に。



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