848 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/05(月) 23:17:16.57 ID:U8kdaYSk0

「いや、ですからね。我々は根拠を求めているわけですよ」

「そんなものはとうの昔に提出していると何度言えば気が済む!」

「ですから、その提出された報告書は何度も読みました。その上でd」

「ならば別にどうこう議論する余地はあるまい。即刻製造販売を停止すべきだ」

「企業側の提出した情報によればHS-112通称『ラッシュ』を服用したところで通常はなんの支障も無いと。
それにこの薬は人類史上初めての『風邪の特効薬』でありその存在価値は極めて大きい。
確かにちょっとばかり副作用が起こりやすくはありますがね。」

「黙れ!!ゼネラルの手先め。貴様のような奴が蔓延るからこの国は。いや、この世界はこんな事になったのだ!!」

「えー、予定時間の為本日はこれにて終了とさせていただきます。次期日程は明日―――

ブーンは先程まで話し合いが行われていた部屋から出てくる人の波に紛れ肩を落として歩いていた。
暫く行った先にある休憩スペースにドクオの姿を認めるとだるそうに彼の隣へ腰を落とす。
一目見てわかるほど落ち込んだその姿から聞かずとも結果が知れるというものだ。


850 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/05(月) 23:17:48.73 ID:U8kdaYSk0
( ´ω`)「ドクオ・・・今日も駄目だったお」

('A`)「その様だな。連中のgdgdっぷりは部屋の外に居てもひしひしと伝わってきたぜ」

( ´ω`)「やっぱり、僕たちが頼れる相手なんか存在しないのかお。」

ドクオはただブーンの肩を二三回叩き話を変える。

('A`)「彼女はどうだ?」

( ´ω`)「ツンは・・・なんとか快方に向かっているお」

('A`)「そうか・・。そりゃ良かった」

そうは言ったもののそれっきり結局二人は黙り込み、沈黙が訪れた。

本当は全く良く等無い。
確かに彼女は目立った後遺症も無く無事回復に近づいている。
それでも、今この瞬間にも彼女と同じ目にあっている人が。
これから被害に合う人々がこの世界に居るかと思うと結局めでたしめでたしとは程遠いのだった。


852 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/05(月) 23:18:23.82 ID:U8kdaYSk0
2020年代後半からある世界的現象が巻き起こった。
各国の巨大企業がまるで共食いでもするかのように吸収合併を繰り返し始めたのだ。
その動きは4年ほどで終息し、そしてある怪物をこの世に産み落とした。
――『ゼネラルグループ』
元は米国の軍需産業の中核をなす企業だったある会社を中核として巨大化したソレは
今や晩のおかずから兵器まで文字通りありとあらゆる産業を牛耳る超巨大多国籍企業複合体へと成長するに到る。

肥大化した企業に国家という枠組みはもはや無力であり国境は地域区分の役割しか成さない。
かくして事実上『国境なき世界』が完成した。
紛争も貧困も、おおよそ国家の存在によって生じていた問題は悉く消滅。

人々は表面上文明の進歩を感じていたし、事実ゼネラルのやり方は概ね正しかった。
だた、少しばかり。
世界人口から見れば極々僅かの人々が割を食っただけで。


853 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/05(月) 23:18:57.49 ID:U8kdaYSk0
( ´ω`)「確かにゼネラルの存在は総合的に見れば間違いなく必要なものだお」

脳裏に病室で見た寝巻き姿のツンの細い肩が蘇る。

( ´ω`)「だけど、だけど。どうしても受け入れる事が出来ないお・・・」

ブーンはその顔を両手で覆ったまま搾り出すように呟く。
その声は怒りというよりは、寧ろ苦悩に近かった。

('A`)(だが、アレのお陰で風邪で死ぬ老人が激減したのは事実だな。社会的にはそっちの方がより重要ってか)

('A`)(それにしたってもう少し・・)

ドクオは相変わらずのブーンの様子をちらりと横目で見やると紙コップに残る
すっかりぬるくなったコーヒーの残りを飲み干し立ち上がった。
大きな窓から見える夕日が妙に綺麗だった。



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