(,,゚Д゚)ギコがしぃを護るようです。
874 名前:お題「痛恨の失敗」「信念を貫く」「立ち上がれ」[] 投稿日:2007/01/28(日) 23:31:37.58 ID:cElWjP+u0
(,,゚Д゚)ギコがしぃを護るようです。
月が綺麗に輝く、夜。街の誰もが寝静まった頃。
その入り組んだその迷路のような街の、数ある裏路地。
その内の一つには―――月明かりに照らされる、四人の影。
一つの影は、背中に剣が突き刺さったままの死体。
一つの影は、負傷した女性。
残る二つの影は―――対峙していた。
(#゚Д゚)「ずぁあぁっ!!」
叫んで、対峙する影の一人―――ギコは斧を振るう。
彼の人を殺せるような視線、そして振るわれた斧は、彼と対峙している男に向けられていた。
斧による、一閃。
遠心力を味方にし、なおギコの驚くべき腕力で振り抜かれた斧。
それは、はっきりと見える残像を残すほどの早さで、男を捕らえんとする。
だが―――。
( ・∀・)「甘い、なぁ―――。甘い甘い甘い甘い。甘すぎる……楽しさの欠片もない。詰まらないよ」
ギコの鼓膜を、男の言葉が静かに叩く。
その時には、ギコは男に蹴り飛ばされていた。
もちろん彼の斧は男を捕らえる事もなく―――斧は彼の手から抜け落ち、石畳にその身を突き立てるに終わった。
875 名前:お題「痛恨の失敗」「信念を貫く」「立ち上がれ」[] 投稿日:2007/01/28(日) 23:32:36.56 ID:cElWjP+u0
(;゚Д゚)「ご、あぁっ!!」
妙な呻き声をあげ、ギコは石畳を転がる。
すぐにまた立ち上がろうとするが、男に脇腹を勢いよく蹴り飛ばされ、立てずに終わった。
( ・∀・)「得物を失くし、護ってくれていた親友さえも失くし―――それでも向かってくる事は賞賛するが……。
いや、それにしても愚かしい。何故私に向かってくる?私に勝てないのは分かりきっている事だろう?」
男の質問に答えないまま、ギコは立ち上がる。
恐怖からその足は震え、口からは叫びが出そうになる。
それでもギコは耐え、男の質問に答える。
(,,゚Д゚)「……ジョルジュは、俺を護ってくれた。そのおかげで、死んだ。貴様に、殺された」
( ・∀・)「……何を言っている?もしや、復讐なんてくだらない理由で私に向かってくるのかね?」
(,,゚Д゚)「違う。俺も、しぃを護らなくちゃいけない。俺が貴様を殺せなければ、しぃが貴様に殺される」
( ・∀・)「護る為に戦う、と?くだらないね」
そう呟いて、男は一瞬でギコの懐に侵入。彼の足を手加減なしに蹴り飛ばした。
鍛えられたその蹴りは重く、すでにヒビの入っていたギコの足首は、妙に軽い音を立てて折れた。
もちろん、ギコはまたも倒れ、石畳にキスをする事になる。
876 名前:お題「痛恨の失敗」「信念を貫く」「立ち上がれ」[] 投稿日:2007/01/28(日) 23:33:46.52 ID:cElWjP+u0
( ・∀・)「ほぅら。もう立てないだろう?君はそんな物だ。誰かを護るなんて気持ち……信念なんて、そんなものだ。
くだらない物に固執する……愚かしい、汚らわしい。君は誰も護れずに―――そこで死に行け」
男はそう言って、ギコから離れる。
否。ギコから離れたのではない。ギコの後ろにいる負傷した女性―――しぃに向かっていたのだ。
ギコは急に焦ったような口調になる。
(;゚Д゚)「や、やめろ!しぃは……しぃだけは!」
( ・∀・)「……ふん。そのくだらない信念、折ってやろう。粉々に、見る影もないくらいにね」
ギコは立ち上がろうとする。だが、立てない。足に力が入らない。
だが、それは足首のせいではなく―――恐怖から、立てなくなっていた。
ギコは自分を情けなく思う。呪い、悲しみ、歯軋りする。
恐怖する自分を、どうしようもないクズだと悲観する。
877 名前:お題「痛恨の失敗」「信念を貫く」「立ち上がれ」[] 投稿日:2007/01/28(日) 23:35:33.81 ID:cElWjP+u0
頭に、ジョルジュを―――己のライバル、そして目標、そして親友である男を思い浮かべる。
ジョルジュ、俺に、お前ほどの力があれば……。
そうギコが想った時―――
「力?んなもん必要ねぇよ」
―――彼の脳内で、声が響く。
彼は驚愕した。その声は―――ジョルジュの物であったから。
「何かをしようとする時に必要なのは、信念だけだ。誰かを護りたい、とかな」
「強い信念があれば出来ない事なんてないし、お前は俺より強くなれる。しぃを護る事だって出来るんだ」
「だから、ギコ」
「立ち上がれよ」
がばっと、ギコは立ち上がる。
その足首に、立ち上がれないほどの負傷を負っていながらも。
恐怖は消えていた。それどころか、熱くて力強い物が、彼の中で燃え盛っていた。
878 名前:お題「痛恨の失敗」「信念を貫く」「立ち上がれ」[] 投稿日:2007/01/28(日) 23:38:24.48 ID:cElWjP+u0
彼は、叫ぶ。
自分の信念を、誇るように。強く、熱く、その存在を、世界に刻むように。
(#゚Д゚)「モララーーー!!」
ぴくりと、しぃに向かっていた男―――モララーが、動きを止める。
そして、「ほぅ」と、楽しそうに笑った。
( ・∀・)「まだ立ち上がれたか。んん?」
(#゚Д゚)「貴様に、しぃは触らせねぇ。……俺は、護りたい者を護る。ジョルジュのように……」
「俺は、信念を貫く!!」
そう叫んで、ギコは走り出した。
走れるような足でないのに。それでも、愛する者を護らんとする為に。
( ・∀・)「得物もないのに、信念だけで私が倒せるとでも?甘い考えは捨てたまえよ!」
モララーはそう言って、走り来るギコに向けて拳を振るう。
その拳はギコの頬に向かって、まるで最高速度のダンプカーのようなスピードと重さを持って。
879 名前:お題「痛恨の失敗」「信念を貫く」「立ち上がれ」[] 投稿日:2007/01/28(日) 23:40:34.37 ID:cElWjP+u0
だが。
一瞬の後、その拳に触れた物はギコでなく―――ナイフ。
ナイフが、彼の拳にその牙を突き立てていた。
(;・∀・)「なっ……!!」
( ゚Д゚)「貴様は痛恨の失敗を……ミスをした」
ギコはそう言って、彼の拳に更にナイフを深く刺し込む。
血が、拳から石畳へと落ちて染みを作る。
( ゚Д゚)「俺に得物がないと、勝手に判断した事。そして……得物がないと自分には勝てないと慢心した事!」
そう吐き捨て、ギコはモララーの頬を思いきり殴りつけた。
(;・∀・)「あご、ふっ……!!」
おかしな声を漏らしながら、モララーは地面を転がる。
ギコは新たなナイフを―――服の袖から出したナイフをその手に握りながら、モララーに走り寄った。
そして。
(#゚Д゚)「貴様の最悪のミスは……信念を馬鹿にした事だっ!!」
そのナイフを、モララーの首に突き立てた。
少しの間だけ声にならない呻き声をあげ―――まもなく、モララーは絶命した。
880 名前:お題「痛恨の失敗」「信念を貫く」「立ち上がれ」[] 投稿日:2007/01/28(日) 23:43:04.79 ID:cElWjP+u0
(#゚Д゚)「少ないミスでも、致命的なミスだったな……モララー」
そう呟いて、ギコはその場に崩れる。
砕けた足を無理矢理に行使した結果、足が耐えられなくなったのだ。
(;゚Д゚)「……っちぃ」
一つ舌打ち。彼は身体の向きをモララーとは逆の向きに変える。
それからギコは、這って行くかのように、その身を前進させる。
その先には、負傷した女性―――しぃ。
ギコの、愛する女。
(;゚−゚)「ギコ、君……」
(;゚Д゚)「しぃ……!」
ギコが這い、這い、這い続ける。
そして、しぃに辿り着いて―――ギコは、しぃを抱き締めた。
(,,゚Д゚)「しぃ……」
(*゚ー゚)「ギコ君!」
そう言って、しぃもギコを抱き締める。
ギコは、幸せだった。
信念を貫けた事。愛する者を、護れた事。
881 名前:お題「痛恨の失敗」「信念を貫く」「立ち上がれ」[] 投稿日:2007/01/28(日) 23:44:03.88 ID:cElWjP+u0
月夜が照らす、裏路地。
恋人達は、勝利した。
ギコは視界にジョルジュの死体を収めながら、誓う。
絶対に、信念を貫き続ける。しぃを、護り続けると。
ジョルジュの死体は、心なしか、笑っているかのように見えた。
終わりー。
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