('A`)とある昼下がり


632 名前:('A`)とある昼下がり[] 投稿日:2007/02/09(金) 01:03:14.18 ID:Tox+QQrQO

 昔を懐かしむのは、どこか年寄り臭い。
 それでも、過去にすがらずには生きて行けない。
 「大人」は予想以上に退屈だ。

('A`)「……」

 幼い頃、「おとな」はある種の神だった。
 力があり、金があり、成熟した人間の完成系。
 特撮の世界では常に子供は被害者で、それを助けるのが大人が扮するヒーローだった。

('A`)「懐かしいな……」

 しかし、それは理想であり、フィクション。
 「大人の戦い」は思いの外、保守的だ。
 上司に頭を垂れ、家族に媚を売る。

('A`)「ま、“家族”何て居ねぇけど」

 夢にまで見た「おとな」は余りにも現実的過ぎた。


633 名前:('A`)とある昼下がり[] 投稿日:2007/02/09(金) 01:03:57.98 ID:Tox+QQrQO

('A`)「何か“革命”みてぇなの起こんねぇかな……」

 そして大人はいつだって動けない。
 「明日は会議だから」
 「今日は忙しかったから」
 「昨日は上司に付き合わされて」
 「大人」には保守に徹するだけの理由、もとい言い訳があり過ぎた。

('A`)「……それで?」

 それで、俺はどうしよう。
 悩もうとも名案は浮かばない。

('A`)「そう言えば……」

 小学生時代のクラスメイトは言った。
 「信じれば空も飛べる」と。
 それで彼は飛んだのだろうか。
 否、恐らく飛んでいない。
 良くて、精々「パイロットになりました」程度だろう。
 パイロットは上司に頭を垂れないのか。家族に媚を売らないのか。


634 名前:('A`)とある昼下がり[] 投稿日:2007/02/09(金) 01:04:44.49 ID:Tox+QQrQO

 これも違うと言える。
 所詮は高が「大人」だ。

('A`)「じゃあ、俺はどうすりゃ良いんだ……」

 夢も希望もないじゃないか。
 この世は知れば知る程に残酷じゃないか。

(;A;)「もう……嫌だよ……」

 日々、募る焦燥。
 漠然とした不安。
 言い知れぬ恐怖。
 逃げ場はない。俺は遂に、そんな「大人」になってしまった。
 必死になって「大人」の利点を浮かべて見る。
 煙草が吸える。
 酒が飲める。
 十八禁、解禁。
 どれも決定的ではない。

('A`)「くっ……やってらんねぇ、っての……」

 そんな訳で俺は平日の昼間から酔っ払って居た。


635 名前:('A`)とある昼下がり[] 投稿日:2007/02/09(金) 01:05:24.17 ID:Tox+QQrQO

 肴は窓から見えるソメイヨシノ。
 中々に悪くない。が、問題は何も解決しない。

('A`)「そりゃあ、どうしようもねぇさ……皆、痩せ我慢してんだろうよ」

 アルコールの力を借りて、一時的に作られた「逃げ場」。
 翌朝には何倍にも膨張した「現実様」がお出迎え。

('A`)「それでも―――」

―――堪えるしかない。

 生きると言うのはそう言うものだろう。
 いつの日にか父親に連れられて行った映画館。
 暗闇、ポップコーン、近未来SF。
 フィルム音、咳、大きい画面。
 ヒーローも居ない、人も車も飛べない、夢のない世界。


636 名前:('A`)とある昼下がり[] 投稿日:2007/02/09(金) 01:06:14.14 ID:Tox+QQrQO

 俺は虚ろな目で笑って、たまにちょっと泣いたりして毎日をやり過ごす。
 ただ、今日は仕事を放り出して、ちょっと酒が旨くて、桜が綺麗だった。
 たったそれだけの「現実」に何故か、ちょっとだけ、子供みたいに笑った。

―fin―



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