( 'A`)の現実

368 名前:( 'A`)の現実[] 投稿日:2007/01/22(月) 01:57:51.37 ID:gFRGtuIrO

『そんな……アナルから靴下が……っ!!』

 画面の中で無表情な女がひわいな言葉を並べる。
 程度の低いエロコメディドラマ。
 真っ暗な四畳半でブラウン菅の放つ明かりだけが俺と彼女の顔を照らした。

从 ゚∀从「ドクオ……好きだね……それ」

 抑揚のない声で彼女が呟く。

( 'A`)「別に……」

 身に覚えのない疑惑に少し凹む。
 俺はそんなに「これ」が好きか?

从 ゚∀从「……違う?」

( 'A`)「違う」

 不機嫌に言葉を返すと彼女は不安気に俺を見つめた。どうって事はない。八当たりだ。
 自覚すると、情けなくなるから困る。


369 名前:( 'A`)の現実[] 投稿日:2007/01/22(月) 01:58:28.46 ID:gFRGtuIrO

( 'A`)「ごめ―――」

 言葉を繋いだその瞬間、俺の口は塞がれた。
 急な彼女の接近と、唇に触れた温もりに少したじろぐ。

( 'A`)「っ……どうしたんだよ……?」

 自身の緊張を隠そうとする余り、声は更に不機嫌な物へ。

从 ゚∀从「大変、美味しゅう御座居ましたっ……♪」

(;'A`)「そんな言葉、どこで覚えたんだよ……」

 誤魔化せ。誤魔化せ。
 誰にも「俺」を悟られてはいけない。
 逃げ切れ。逃げ切れ。
 出来るだけ冷たい方へ。

从 ゚∀从「ドクオ……」

(;'A`)「……」


370 名前:( 'A`)の現実[] 投稿日:2007/01/22(月) 01:59:12.83 ID:gFRGtuIrO

从 ゚∀从「私……怖い?」

 一瞬、言葉の意味が解らなくて戸惑う。
 次に、言葉の意味を理解して戸惑う。

( 'A`)「怖いんじゃない……解らないんだ……」

 焦ったら最後。
 隠していた感情はクモの子を散らす様に溢れ出す。

( ;A;)「だって……俺、お前にも悪い事一杯したし……」

 自分の言葉に胸を痛める。こればかりは八当たりも出来ない。

( ;A;)「それなのに……お前は俺を必要としてくれる」

―――信じられないんだ。

 信じたい。でも、怖い。自分の思い通りにならない自分が疎ましい。

( ;A;)「俺……お前と居て良いのかな……」

 「俺」。

( ;A;)「……ここに居て良いのかな―――……」

从 ゚∀从「ドクオ……」


371 名前:( 'A`)の現実[] 投稿日:2007/01/22(月) 02:00:06.50 ID:gFRGtuIrO

 彼女は何て言うんだろう。甘えちゃいけない。逃げちゃいけない。

从 ゚∀从「居場所のない現実こそ、俺の居場所なんだ……」

 いつの間にそんな言葉、覚えたんだよ―――……

( ;A;)「……ありがと」

从 ゚∀从「ドクオの好きな、ドラマ……」

 完璧に隠してた筈の俺。「誰にも理解して貰えない」理由付け。
 それでも彼女は、ちゃんと理解してくれていた。
 俺の事を見ていてくれた。

( 'A`)「……ありがと」

 暗い部屋の中、二人固まって、俺は声を出して泣いた。


372 名前:( 'A`)の現実[] 投稿日:2007/01/22(月) 02:00:43.33 ID:gFRGtuIrO

「――聞こえているか!? 両親二人を殺害し、娘を拉致、監禁した罪で逮捕する!!」
「娘は無事か!?」
「モタモタするなっ!!」
「ドクオッ―――!!」

 俺にはもう、何も聞こえなかった。

―fin―


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