('A`)と元気の出る同人誌



837 名前:('A`)と元気の出る同人誌[] 投稿日:2007/01/23(火) 08:54:27.33 ID:cs/5V7s7O
「ジャイアン……すごく綺麗だよ……」
「ス、スネオ! そんな、恥ずかしい……」
「ジャイアン。目を、つむって……」


(;'A`)「……なんだこれ?」

ドクオは手に持っていた同人誌をベットへ放り投げた。
期待に膨らんでいた彼の股間は、一瞬のうちに精気を失った。

('A`)「ブーンの野郎、とんでもない物よこしやがって……」

秘蔵の同人誌がある。元気になる。あんな台詞、信じるんじゃなかったと彼は心底後悔した。
ふと時計に目をやると、デジタルの表示は二十ニ時を示していた。
('A`)「もう、五時以上経つのか……」

彼は机にむかった。
勉強する為ではない。今日起こった出来事を整理する為だ。

ドクオは子どもの頃から、悩んでいる時や考え事をする時、机に向かって瞑想をする癖があった。
仮に親にその姿を見られても、文句は言われない。あたかも勉強しているように見えるからだ。
彼の幼い頃の浅知恵だった。

(-A-)「今日、俺は……」

838 名前:('A`)と元気の出る同人誌[] 投稿日:2007/01/23(火) 08:55:16.80 ID:cs/5V7s7O
十六時四十分過ぎ。某高校の一年ニ組の教室。
辺りが夕日色に染まり、どこらしら哀愁が漂う時刻。
放課後の教室は、普段は大体の生徒が部活や塾へ直行。
残ってワイワイ騒ぐのは、俗に言う帰宅部と呼ばれる連中のみだった。

しかし、この日は違っていた。

('A`)「あ……」

(*゚ー゚)「あ……」

ドクオの前方三メートル程の距離にいるのは、クラスのアイドル。彼の憧れの人物。
普段は塾へ向かっているはずの彼女。どうやら忘れ物をしたらしく、荷物を取りに戻っていた。
偶然にも、ドクオも忘れ物を取りに教室に戻っていたのだった。

840 名前:('A`)と元気の出る同人誌[] 投稿日:2007/01/23(火) 08:56:07.57 ID:cs/5V7s7O
前述した通り、普段はこの時間でも、帰宅部が談笑や何やらで賑やかな教室。
だが、今日に限っては違った。
他に生徒はいなかった。

見つめ合うふたり。
いつもはこんな状況なら照れ臭くてすぐに視線を逸らす彼なのだが、
この時は不思議と真っ直ぐ彼女を見つめることができた。
横から射す太陽の光のせいかもしれない。

夕日によって赤く染まったように見える彼女のあいくるしい顔。
くりくりとした大きな瞳は、潤んでいるように見えた。
そしていつにも増して、彼女は可愛く見えた。

彼は何か特別な雰囲気を感じていた。
チャンスだと思った。
まるで神様が背中を押しているようだった。

('A`)「好きです」

なんの躊躇いもなく出た言葉だった。
ムードは良かった。彼は今でもそう思っている。

彼女にとっては唐突な告白だったのかもしれない。両手で頬を包み、視線を落とした。
その仕草は彼にとって、恍惚した顔を隠しているように見えた。

しばらくの沈黙。だが、苦にはならない。彼には自信があった。

そして、ゆっくりと、彼女の口が開いた。

(*゚ー゚)「私は……」

841 名前:('A`)と元気の出る同人誌[] 投稿日:2007/01/23(火) 08:57:01.61 ID:cs/5V7s7O
そこで、彼は思考を止めた。
胸を締め付けられるような痛みと、大量の涙が溢れた為だった。

(;A;)「……なんで、だろ? なんで……」


あの後彼は、玄関に待たせていたブーンに、教室での出来事の全てを話した。
彼は笑い話にでもしようと思ったが、胸の内から込み上げる何かがそれの邪魔をした。
話しの後半は言葉にすらならなかった。
しばらくして、ブーンは言った。

( ^ω^)「秘蔵の同人誌があるお! それを見て元気になるお!」


彼はベットの方に目をやった。そこにある同人誌はあるページを開いていた。
それは、きれいなジャイアン十人程がスネオをボコボコにしている見開きだった。

(;A;)「……なんで?」

冒頭の話しからは想像も出来ない展開だった。興味を持った彼は、とりあえず読んでみることにした。

(;∀;)「ふふ……あはは…… なんだよこれ、面白過ぎだろ……」

一筋の涙が、きれいなジャイアンの顔に落ちた。まるで、彼の代わりに泣いているようだった。

('∀`)「……ブーン、きれいなジャイアン、ありがとう」

彼はもう泣かない。紙面上のきれいなジャイアンは、優しく微笑んでいた。

〜終〜


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