( ^ω^)のクリーニング屋
486 名前:閉鎖まであと 1日と 3時間[] 投稿日:2007/01/22(月) 17:39:18.45 ID:k33NIrQJ0
やべ、お題もらったけど入れるの忘れてたわ。
でもせっかく書いたから投下させてもらうね
487 名前:( ^ω^)のクリーニング屋[] 投稿日:2007/01/22(月) 17:41:00.33 ID:k33NIrQJ0
お題
クリーニング屋(脳内補完)
親子愛(脳内補完)
クリーニングとは(脳内補完)
投下します
488 名前:( ^ω^)のクリーニング屋[] 投稿日:2007/01/22(月) 17:42:41.31 ID:k33NIrQJ0
( ^ω^)「ありがとうございましたお。またのご来店をお待ちしてますお」
既に背中を向けて、全く聞いていない客に対してもそう笑顔で声を掛ける。
その客が店から出て行ったのを見届けると、背後から物音がした。
J( 'ー`)し「…ふわぁあ…あんたちゃんと働いてる?」
( ^ω^)「…カーチャン、また寝坊かお…」
その言葉には答えず、無言で内藤を一瞥すると母親はまた奥に引っ込んだ。
大方、居間でテレビでも見るんだろう。
内藤はいつも通りそう思ったが、別に何も言わなかった。
「こんにちわ」
不意に声を掛けられる。
( ^ω^)「おっ!いらっしゃいませですお」
「これのクリーニングお願いしたいんですけど…」
( ^ω^)「分かりましたお。どんな……」
ここ数年と変わらない一日が、今日も過ぎようとしていた。
489 名前:( ^ω^)のクリーニング屋[] 投稿日:2007/01/22(月) 17:44:17.00 ID:k33NIrQJ0
( ^ω^)「…今日も疲れたお…」
古ぼけたエプロンをカウンターに放り投げ、そう呟く。
このエプロンは医者の不養生ならぬ、クリーニング屋の不衛生である事に彼は全く気付いていない。
靴を脱ぎ、戸を開けるとそこが彼、そして母親の家だ。
( ^ω^)「……」
居間にはごろんと母親が寝転がっていた。
まさにマグロを思わせるような、そんな体型だった。
寝ている時に身体がビクンとなる癖もあるので、差し詰め陸揚げされたマグロといったところだろうか。
J( 'ー`)し「……」
( ^ω^)「…カーチャン起きてお、夕食の時間だお」
少し遠慮がちに、そう声を掛けながら母親の身体を揺する。
何度か繰り返すが、一向に起きる気配は見受けられなかった。
490 名前:( ^ω^)のクリーニング屋[] 投稿日:2007/01/22(月) 17:45:37.82 ID:k33NIrQJ0
( ^ω^)「…起きてお、起きてお。お腹すいたお」
六度目か、七度目か、続けたときに内藤はふと気付いた。
( ^ω^)「………カーチャン…?」
J( 'ー`)し「……」
そっと口元に手をあてがってみる。
( ^ω^)「……」
しかしその手に風圧は感じられなかった。
( ^ω^)「……カーチャン…?…」
動揺する心を抑えて、周りを見渡してみる。
ポテチの袋に、明治のチョコ、その横には見慣れた箱が置いてあった。
( ^ω^)「ペロ……!これはクリーニングの業務用洗剤!」
信じられない思いを抱きつつ、母親の手首で脈をとってみる。
( ^ω^)「……死んでる……お…」
491 名前:( ^ω^)のクリーニング屋[] 投稿日:2007/01/22(月) 17:47:02.57 ID:k33NIrQJ0
嘘だと思いたかった。
信じたくなかった。
しかし、現実は確かにそこに存在していた。
( ^ω^)「…そんなことが…」
膝に力を入れ立ち上がり、それを見下ろす。
それとは、先ほどまで母親だったもの。
だが今は、母親でもなくマグロでもなく、ただの亡骸。
( ^ω^)「……」
死因はおそらく、この業務用洗剤をお菓子類と間違え食してしまったことだろう。
クリーニング業者として恥ずべき、初歩的ミスである。
いや、人間としても十分恥ずべき行為に当たるだろう。
マグロでも同じだ。
( ^ω^)「……なんてことだお…お?」
視線を落とした先に、何かを見つけた。
493 名前:( ^ω^)のクリーニング屋[] 投稿日:2007/01/22(月) 17:47:51.28 ID:k33NIrQJ0
( ^ω^)「…これは…?」
紙に文字が綴られていた。
唯四文字。
「 せ ん ざ い 」
最期の「い」の文字は今にも消えてしまいそうな字だった。
おそらく息子の顔を思い浮かべながら、最期の力を振り絞って書き残したのだろう。
( ^ω^)「……カーチャン」
その紙を無造作に投げ捨て、床に腰を下ろした。
( ^ω^)「……」
頭の中はなぜか感傷に浸っていた。
思い出すのは、ここ数年での暮らし。
494 名前:( ^ω^)のクリーニング屋[] 投稿日:2007/01/22(月) 17:49:18.72 ID:k33NIrQJ0
父親が死んで、実家のクリーニング屋を継がなくてはならなくなった時は心底落ち込んだ。
何が楽しくて、他人の衣類を洗わなくてはならないのか。
はじめはそればかり考えていた。
安い金額で、奉仕させられる毎日。
少しでも悪いところがあれば苦情がきた。
何度、難癖をつけられたか。
辞めようと思ったことは一度や二度ではない。
それでも続けていくうちにやりがいを感じるようになった。
ありがとう、と言ってくれる常連客も出来たし、業務にも慣れた。
クリーニングすることの喜びを見つける事が出来た。
( ^ω^)「……」
タイムスリップした頭を現実に戻し、横たわるそれを見やる。
495 名前:( ^ω^)のクリーニング屋[] 投稿日:2007/01/22(月) 17:50:39.05 ID:k33NIrQJ0
( ^ω^)「……」
そして立ち上がると、それを背中に担ぎ仕事場へ移動した。
( ^ω^)「……カーチャン…」
目の前にあるのは大きな洗濯機。
内藤は背中のそれをその中に放り込んだ。
( ^ω^)「……今までありがとうだお。…綺麗にしてあげるお」
スイッチを押し、洗濯機が音を立てて回る。その回転に母親の身体もグルグルとつられて回った。
時折、ガン、と身体がぶつかる音がし、母親の綺麗だった身体も顔も血だらけになっていった。
( ^ω^)「……綺麗だお、カーチャン」
そう言って、中を覗き込む。
内藤には心なしか、母親の血だらけの顔が笑っているように見えた。
洗濯機は回転を止めない。
グルグルと。グルグルと。
脱水を待ちわびるように……
( ^ω^)のクリーニング屋 おわり
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