( ^ω^)は夢を見るようです
377 名前: ◆277U0aEonY [] 投稿日:2007/01/27(土) 21:57:17.34 ID:qv2a/lmP0
朝。VIP中学の廊下に女生徒の人垣が出来ている。
その中心には、ものすごい美男子が立っていた。
( ^ω^)「おいすー」
美男子の後ろから、だるそうな同級生が声をかける。
(´・ω・`)「おはよう、我らがヒーロー殿!」
('A`)「昨日のリレー、お前一人で最下位から1位だもんな! すごかったぜ!」
( ^ω^)「まーかせなさい! ボクは何でもやらかすお!」
この男、内藤ホライゾン。
通知表の平均は、10段階評価で平均9.3
ポッチャリ気味なのを除けば、まさに完璧な男だった。
( ^ω^)「フヒヒwwwwww」
( ^ω^)は夢を見るようです
378 名前:( ^ω^)は夢を見るようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 21:58:03.35 ID:qv2a/lmP0
教室に入ると、さすがに女生徒たちも居なくなる。
内藤は広くなった視界を活かし、視点をある一点に注いだ。
(*゚ー゚)「……?」
(*^ω^)「ポッ」
しぃ。頭は悪いし体力も無いが、顔だけはいい。
何より素直な性格の彼女を、内藤は気に入っていた。
('A`*)「また彼女っスかwww内藤さんwwwww」
( ^ω^)「ちょwwwおまwwwwww」
彼の熱い視線はモロバレだったので、友人も応援していた。
ただ鈍感な(*゚ー゚)だけが、その視線に気づかなかった……
('∀`*)「フヒヒwwwサーセンwww
俺ら隣のクラスなんで帰りますねwwwwww」
379 名前:( ^ω^)は夢を見るようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 21:58:23.19 ID:qv2a/lmP0
全てを極めた内藤には、友人が少ない。
仲がいいのは、負け犬ライフに胸を張る幼馴染・ドクオと、マイペースなショボンだけ。
その彼らは隣のクラスなので、内藤は教室にいない日が多かった。
帰り道、ドクオとショボンが話しかけてくる。
(´・ω・`)「内藤さん、もう告白したの?」
( ^ω^)「そりゃまだ……いや! もう告ったおwwwww」
見栄とも呼べない、小さな見栄だった。
事実、内藤の美貌はアイドル顔負け。告白すれば当選確実と思われた。
明日の事実を先取りしただけ。誰が見ても、そう思われた……
(,,゚Д゚)「それでさー」
(*゚ー゚)「えー、やだー」
381 名前:( ^ω^)は夢を見るようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 22:04:09.28 ID:qv2a/lmP0
(;^ω^)「……あれ?」
翌日、内藤は我が目を疑った。
ギコ。ブーンに匹敵する美貌と、知性を備えた男。
そいつが、しぃと手をつないでいた。
――なんで?
――そいつよりボクのほうが体育できるじゃないか。
――どうして、そいつなの?
いくつもの言葉が脳裏をかすめ、散っていく。
内藤は教室を飛び出した。
('A`)「よお」
(;^ω^)「なっ!?」
そこには、いつも通りの顔をした、友人がいた。
('A`)「どうです、付き合った一日目は?」
( ゜ω゜)「!」
('A`)「あーあ、うらやましいなー。内藤さんの顔なら一発OKだよ」
(;^ω^)「あうあう……」
言った。付き合ったって言った。
今さら「嘘だった」なんて言えるもんか――!
382 名前:( ^ω^)は夢を見るようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 22:05:00.39 ID:qv2a/lmP0
( ゜ω゜)「うん、おかげで楽しく過ごせてるお」
('A`)「いいなー。俺もC2たんに脳みそハッキングされてぇー」
そこから卒業までを、どうやって過ごしたのか……内藤の記憶にない。
ただ部活に。ただただ受験に。
なんかに没頭し、ドクオやショボンとの接触を避け続けた。
幸い、しぃとギコのことが隣のクラスまで話題になることはなかった。
内藤はトップの成績で、超有名高校へ行った。
しぃは頭が悪く、内藤とは別の高校へ入ったと、風の噂で聞いた。
通学路の違いは、急速にしぃの記憶を薄れさせてくれた。
友人には「通学のせいで疎遠になった」と嘘をついた……他愛ない、無害な嘘だ。
内藤は、ようやく失恋のダメージから立ち直ろうとしていた。
……あの日までは。
383 名前:( ^ω^)は夢を見るようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 22:05:50.66 ID:qv2a/lmP0
???「あの、内藤くん?」
( ^ω^)「おっ?」
ある放課後、背後から声をかけられて、内藤は振り向いた。
そこには忘れたはずのしぃが立っていた。
(;^ω^)「しぃちゃん! どうしてここに?」
(*゚ー゚)「家が引っ越して、通学路が変わったから……」
それっきり彼女はうつむき、モジモジと言葉を濁す。
その仕草は昔のままで、とても懐かしく、同時に魅力的だった。
(*゚ー゚)「内藤くん、聞いて欲しいの」
( ^ω^)「なんだお?」
(*゚ー゚)「本当はね、通学路が変わったの、だいぶ前なんだ」
ふーん、と気の無い返事をする内藤。
(*゚ー゚)「それで、ずっと見てきたの。あなたの後姿を」
とても格好良かったと、彼女は熱っぽく訴える。
384 名前:( ^ω^)は夢を見るようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 22:10:00.37 ID:qv2a/lmP0
(*゚ー゚)「私、自分の本当の気持ちに気づいたの。私は内藤くんが好き。大好きなの!」
(;^ω^)「え?」
(*゚ー゚)「だから付き合ってください。お願いします!」
刹那。内藤の脳裏に閃いたのは、友人の顔だった。
しぃと付き合ったら、ドクオたちと顔を合わせないわけがない。
そうすれば、どうなるか――
『また付き合ってるの?』『またって何が?』
バレてしまう。自分の嘘がバレてしまう。
それは完璧超人である内藤にとって、避けねばならぬ屈辱であった。
(*゚ー゚)「……内藤くん?」
だから。
( ゜ω゜)「ごめん。君みたいな低レベルな人間とは付き合えないお」
(*゚ー゚)「……そんな」
( ^ω^)「二度と話しかけないで欲しいお」
ふることにした。
385 名前:( ^ω^)は夢を見るようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 22:10:25.40 ID:qv2a/lmP0
しかし学校に着いたとき、内藤の心臓は止まりそうになった。
('∀`)「よっ、内藤クン。隅に置けないね、このこのー」
( ^ω^)「ん?」
('∀`)「見たよ。しぃちゃんと話してるとこ」
( ゜ω゜)「! そ、そんなんじゃないお!」
内藤は人間だった。完璧超人といえど、所詮は高校生だった。
( ゜ω゜)「あいつ浮気してたんだお! よりを戻せっていうから、こっちから振ってやったお!」
だから、いとも簡単に、間違いを犯してしまった……
( ゜ω゜)「いい気味だお! あはははっ、いい気味だお!
まったく、まったく、いい気味だおおおぉぉぉぉ!」
386 名前:( ^ω^)は夢を見るようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 22:10:39.27 ID:qv2a/lmP0
( -ω-)-3
自室のベッドに倒れこむと、ぽす、と音がした。
いつもなら安心する音が、今は雑音にしか聞こえない。
この先どうしよう? また中学みたいに部活へうちこむのか?
回る思考を追い続けるうち、内藤はレム睡眠に落ち込んでいった。
(*゚ー゚)『……内藤くん』
――しぃちゃん。
(*゚ー゚)『内藤くん、好き。だーいすきだよっ』
――ボクもだお、しぃちゃん。
夢の中で、彼女は昔の笑顔のまま、いつまでも笑っていた。
それは中学時代、夢にまで見た笑顔だった。
(終)
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