( ^ω^)が宇宙にいくようです
679 名前:( ^ω^)が宇宙にいくようです[] 投稿日:2007/01/26(金) 01:00:38.05 ID:aBYgM0Su0
「スリー…トゥー…ワン……」
そのカウントの後に、それは上空目掛けて発射された。
沢山の人間、カメラ、動物、そして空気さえもが、彼らの旅立ちに震えた。
轟音が薄れていくと共に、機体も人々の視界から薄れていく。
完全に見えなくなってからも、人々は視線を落としはしなかった。
「…Come back safely…」
大衆の中の誰かがそう呟く。
それは、多くの人類が最も上空を見上げた日のことだった。
( ^ω^)が宇宙にいくようです
680 名前:( ^ω^)が宇宙にいくようです[] 投稿日:2007/01/26(金) 01:01:44.26 ID:aBYgM0Su0
「では一旦通信を切る―――」
その言葉が終わると、機内は奇妙な沈黙に包まれた。
その内、一人の男が思い出したようにベルトを外す。
('A`)「……遂に来たな、宇宙に…」
重力から解き放たれた身体を持て余しながら、そして噛み締めながら呟いた。
誰に、というわけでもなかったが、日本語でそう呟くからには相手は自ずと決まっている。
( ^ω^)「……きめぇ、倒置法…」
('A`)「……」
やたらと顔色が優れないその男は、丸顔の男の言葉に冗談を返すわけでもなく感慨に浸っていた。
それとは対照的に、丸顔の男は冷静に機器のチェックを入念に行っていた。
( ^ω^)「…いい加減、ドクオも仕事しろお」
ドクオ、と呼ばれた男はその言葉に何か言い返そうとしたが、思い止まり確認作業を始めた。
('A`)「…ブーンは興奮しないか?…ここ宇宙だぜ?」
( ^ω^)「してるに決まってるお。性的な意味でもお」
ドクオの溜め息で会話は終わった。
681 名前:( ^ω^)が宇宙にいくようです[] 投稿日:2007/01/26(金) 01:02:39.97 ID:aBYgM0Su0
3年前のある夏の日。
その事件は起こった。
後にその事件は被害者の苗字をとって、「鮫島事件」と呼ばれることになる。
鮫島事件は一見単なる殺人事件だった。世間的にもそのように扱われた。
そのため、一般の人々にはさほど記憶に残る事件でもなかった。
しかし、真実は過去に例を見ないほど奇妙なものであった。
被害者の鮫島という男の身体から地球上の物質ではないものが検出されたのだ。
もちろんそれは世間には公表されず、ごく一部の人にしか知らされなかった。
それから数年はその物質の研究が極秘に行われ、いつの間にか事件はNASAが引き継ぐ事になっていた。
天才と呼ばれる人々が多く集まったNASAでも、これといった成果は挙げられずじまい。
唯一、手掛かりと呼べるものは、その昔アポロが持ち帰った「月」の物質に僅かなながら類似点が見られるということだけだった。
そして、今回その調査をするために一つのロケットが地球を旅立ったのだ。
船員は日本人の内藤とドクオを入れて8名。
その全員が、今回の計画のために命を懸けている。
682 名前:( ^ω^)が宇宙にいくようです[] 投稿日:2007/01/26(金) 01:04:38.81 ID:aBYgM0Su0
各人が船長に報告するのを終えると、しばらくは何もすることがなかった。
無重力空間を楽しんでる者や、ドクオのように目を輝かせて外を見つめている者、反応は様々だ。
( ^ω^)「ドクオ、ちょっといいかお?」
('A`)「あとにしてくれ、俺は忙しいんだ」
いかにも面倒くさいといった様子で、手をひらひらと追い返す仕草をする。
( ^ω^)「…目的を忘れてないかお?」
('A`)「……大丈夫だよ。忘れるわけねーだろ」
顔は外を向いたまま、目線だけを内藤に向けてそう答える。
( ^ω^)「…ならいいお」
少しの間を置いてそう返すと、内藤は奥の部屋へ引っ込んだ。
('A`)「……」
その後姿を目の端に認め、また外に視線を戻す。
('A`)「…ホントにあるのかね。…ラグナロクなんて」
吐き出す様に発せられたその声は、誰にも受け止められずに消えた。
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