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( ^ω^)が思い出すようです



245 名前:( ^ω^)が思い出すようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 11:07:47.71 ID:mP+BURBOO

 僕は何の自覚も持たないまま、大人になってしまった。
 その考え自体が正しく「大人」のもの。
 体の中の重くて冷たい金属製の何かが、心臓の代わりにグルグル廻る。
 大人とは。つまりそんなもの。
 窓の外に目をやると、僕と同じ種類の人達がぞろぞろと歩いている。

( ^Д^)「内藤、ボサッとすんな? 今日中に“バルトアンデス”の記事まとめろよ」

 上司の言葉で我に帰り、視線をデスクへと戻す。
 山積みの資料、空になったコーヒーカップ、一時間前から進展のない記事。
 これは可笑しいな、と思う。
 僕が大人でありたくないなら、ここにいる必要はない筈だ。
 そうだ。正にその通りだ。
 目の前で僕を恨めしそうに睨めつけているのは全て「大人の象徴」。
 窓の向こうの世界。


246 名前:( ^ω^)が思い出すようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 11:08:18.05 ID:mP+BURBOO

( ^ω^)「部長っ!!」

( ^Д^)「どうした? 内藤」

( ^ω^)「気分が悪いんで早退しますお!!」

 言ってやった。
 何かを喚く「大人」を背に、僕は嬉々として会社を出た。

( ^ω^)「うはっ……僕は自由だお!!」

 何者に縛られる事もない「自由」。
 ふと思えば、覚醒した意識の下で直射日光を浴びるのも数年ぶりだ。

( ^ω^)「さて……何するかお……」

 唐突に手にした自由は、何かと扱い難い。
 とは言え、限られた自由だ。ボンヤリしている暇はない。
 僕は目的地も決めないまま歩き出した。

( ^ω^)「取り敢えず昼食だお」

 習慣とは恐ろしい、と僕は思う。
 今の今まで「自由」を求めていた筈が、気付けばコンビニで弁当を手にしているのだから。まるで「忙しい社会人」のように。

(;^ω^)「どう見ても営業マンですお……」


247 名前:( ^ω^)が思い出すようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 11:08:50.95 ID:mP+BURBOO

 心の中で「本当にありがとうございました」と付け足して、気を取り直す。

(;^ω^)「そうだお!! 外で食べればピクニックだお!!」

 幸運な事にコンビニのすぐ前は公園だった。
 なるべく日当たりの良いベンチを探しだし、腰を下ろす。

(;^ω^)「ピクニックって何ですかお? わかりませんお!!」

 この公園はピクニックには向かない、そう思った。
 閑散とした雰囲気、寂れた遊具、最早「神木」の域に達していそうな鬱蒼とした樹木。

 ただ人が居ないかと問われれば、そんな事はない。
 ダンボール製の住宅街と化していた。

(;^ω^)「……取り敢えず、飯にするお」

 コンビニ袋から買ったばかりの弁当を取り出すと、辺りは香ばしい香りに包まれた。

(;^ω^)「ねーお……」

 この匂いはどうやら別のもの、魚を焼いている匂いのようだ。


248 名前:( ^ω^)が思い出すようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 11:09:32.95 ID:mP+BURBOO

(;^ω^)「魚……焼いてるんですかお?」

 ただちに匂いの元を突き止めた僕は、真犯人に問いかける。

( ´∀`)「美味そうモナ……」

 すぐ横の草陰で、ダンボールハウスの主が手作りの七輪で魚を焼いていた。

( ^ω^)「……」

( ´∀`)「若いの、営業中モナ? 見ての通り、我が家に金はないモナ」

 薄汚れた老人はさも楽しそうに声を出して笑う。

( ´∀`)「うはっ、焼っけたーモナー!!」

 老人は、これまた手作りと思われる皿に魚を移す。

( ´∀`)「……半分食べるモナ?」

(;^ω^)「そんなっ、遠慮しますお!!」

 ふと面白い事を思い付いた。
 「まだまだ自分も捨てたもんじゃないな」と感傷に浸り、アイディアを口に出す。


249 名前:( ^ω^)が思い出すようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 11:10:04.04 ID:mP+BURBOO

( ^ω^)「その魚半分と、このお弁当を交換しましょうお」

 老人は少し驚いた様子を見せ、口を開いた。

( ´∀`)「……良いモナ?」

( ^ω^)「勿論ですお」

 僕は老人から十センチ程の魚の半分を貰い、代わりに弁当を差し出す。
 老人は無言で弁当を掻き込み、僕はその隙に貰ったばかりの魚を返した。

( ^ω^)「それじゃあ、失礼しますお」

 僕は晴れやかな気持ちで公園を出て、次の目的地を目指す。

( ^ω^)「次は駄菓子屋に行くお!!」

 子供と言えば駄菓子屋。駄菓子屋と言えば子供。
 子供の頃、実際に駄菓子屋が好きだったかと聞かれると、そうでもないが何となくのイメージだ。
 駄菓子屋の場所は把握している。
 通勤中に会社のすぐ近くにあるのを、たまたま見掛けたからだ。

( ^ω^)「そろそろ暗くなるお……」

 太陽は傾き、西の空を赤紫に染めていた。
 会社から公園も大した距離でないので、駄菓子屋にはあっと言う間に到着した。


250 名前:( ^ω^)が思い出すようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 11:11:33.59 ID:mP+BURBOO

( ^ω^)「すみませーんっ、サイダー下さいおー!!」

 何となく、子供っぽい口調で呼び掛ける。

(´・ω・`)「やぁ、ようこそ。サイダー? これかい?」

 そう言うと店主と思われるおじさんは一本のビンを取り出す。

( ^ω^)「これですおっ!!」

 そのビンには間違いなく「ラムネ」と記載されていた。
 大人になる過程で失ってしまった物。それを取り返したような気分になる。

(´・ω・`)「毎度。また来ておくれ」

 胸を弾ませ、店を出た時、外は既に真っ暗だった。
 冬は日が落ちる時間も早い。
 それと同時に今日が金曜日だった事も思い出す。

( ^ω^)「昔は金曜が嫌いだったお……」

 次の日、友達に会えないから。

( ^ω^)「帰らなきゃ……」

 僕はラムネ片手に職場への道を急ぐ。


251 名前:( ^ω^)が思い出すようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 11:12:01.37 ID:mP+BURBOO

 すぐ視界に入った職場は既に電気が消えていた。
 もう誰も居ないようだ。

( ^ω^)「はぁはぁ……」

 昔はこのくらいの距離を走ったくらいでは、何ともなかった。
 悲鳴をあげる肺を恨めしく思う。

( ^ω^)「違うお……結局は僕自身の問題だお……」

 ぜぇぜぇ言いつつも職場に着き、オートロックを解除する。

( ・∀・)「あ、内藤さん。資料届いてますよ」

 警備室の前を通り過ぎる時、声が掛かる。
 警備員が差し出した大きな荷物を受け取り、エレベーターに乗り込む。
 すっかり慣れたテンポで「4」と「閉」を押すとエレベーターは動き出した。

( ^ω^)「あ、ラムネ……」

 なくしたかと少し焦るも、何て事はない。右手に持っていた。

(;^ω^)「やばいお。シェイクしまくりんぐだお……」


252 名前:( ^ω^)が思い出すようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 11:12:30.83 ID:mP+BURBOO

 昔からこう言う所は変わらない。
 エレベーターを降りてオフィスへ。
 案の定、誰もいないようだ。
 明かりを付け、席に座り、警備員から受け取った資料を見る。

( ^ω^)「何だお? 絵か何かかお?」

 包みを破ると、やはり絵だった。
 綺麗な夕焼けの絵。

( ^ω^)「バルトアンデス……」

 絵に釘付けになりながらラムネを開ける。

( ^ω^)「ビー玉を落とすんだお」

 幼い日の光景がありありと目に浮かぶ。
 すぐに口を持って行かないと溢れてしまうのは仕様だ。

――カラン――

 小気味良い音を立てて、炭酸が暴れ廻る。
 昔は量が多い様に感じたが、今では一瞬で飲み干した。
 久々の運動で熱った体に心地良い。

( ^ω^)「今なら自分でビー玉が取り出せるお」


253 名前:( ^ω^)が思い出すようです[] 投稿日:2007/01/27(土) 11:13:05.27 ID:mP+BURBOO

 そういえば、あの頃は「子供扱い」される事を嫌った。
 失ったものと、得たもの。その両方、全てが「僕」。
 「子供」や「大人」じゃない。「僕」自身だ。

( ^ω^)「さて……仕事するかお」

 開け放った窓のからビー玉を放り投げる。
 遠くへ、遠くへ。
 それは次第に見えなくなる。
 落下して、落下して、落下して行く。
 闇に溶けて行ったビー玉は落下音を最後に、存在を消した。

―fin―





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