( ^ω^)ブーンと不幸なアンクレット
521 名前:( ^ω^)ブーンと不幸なアンクレット[] 投稿日:2007/02/08(木) 20:16:28.92 ID:lae4B1jRO
( ^ω^)「成程……これは腕に着けるのかお」
「アンクレット」。
道端で見付けて、何となく拾った貴金属。
大した価値があるようには見えないが、雨風に晒されたままにするのは忍びない様に思えた。
( ^ω^)「……」
まるで捨て猫に対する様な気持ちで、僕はそれを拾った。
( ^ω^)「これって男が着けても良いもんかお?」
尚も色々調べてみるが、日頃お洒落に気を使わない僕には良く判らない。
522 名前:( ^ω^)ブーンと不幸なアンクレット[] 投稿日:2007/02/08(木) 20:18:01.50 ID:lae4B1jRO
( ^ω^)「ふぅ……何なんだお。お前」
パソコンのモニターから目を離し、手元のそれを見る。
くすんだ銀色が寂し気にモニターの光を返す。
( ^ω^)「……ちょっと汚いお。あ、そう言えば……」
僕はふ、と思い出す。ネット徘徊も無駄ではなかったらしい。
( ^ω^)「あー……歯磨き粉!!」
久しい知識の活躍に喜嬉とし、いつもの五倍くらいの早さで洗面所に向かう。
歯磨き粉を歯ブラシに塗りたくる、いつも通りの行程。
( ^ω^)「うはっ、綺麗になったお!!」
523 名前:( ^ω^)ブーンと不幸なアンクレット[] 投稿日:2007/02/08(木) 20:18:42.40 ID:lae4B1jRO
綺麗な銀色が嬉しそうに笑う僕を映す。
( ^ω^)「綺麗だお……」
(^ω^ )「君のお陰だお!!」
( ^ω^)「うはっ、アンクレットが喋ったお!!」
(^ω^ )「……」
( ^ω^)「……」
一人芝居の虚しさに気付き、いつもより重い足取りで部屋に戻る。手にはピカピカのアンクレット。
( ^ω^)「……擬人化、擬人化」
虚しさを埋めるべく、妄想。
524 名前:( ^ω^)ブーンと不幸なアンクレット[] 投稿日:2007/02/08(木) 20:19:28.79 ID:lae4B1jRO
更なる虚しさを呼ぶ事は知っていたが、気にしたら敗けだと思っている。
( ^ω^)「……昔々、ある所に“アンクレット”と言う、不幸な少女がいました」
客観的にストーリーを描く神様気取りに「不幸」だなんて言われたくはないだろうな。
( ^ω^)「彼女は主人の為に尽くしましたが、ある日、突然、捨てられてしまいました」
前の持ち主は何故、こいつを捨てたんだろう。
( ^ω^)「そんな彼女の元に心優しい……」
嘘は良くない。
( ^ω^)「彼女の元に……良い歳して定職にも就かず、一日中ゴロゴロしている親不幸者が訪れました」
あぁ……。
525 名前:( ^ω^)ブーンと不幸なアンクレット[] 投稿日:2007/02/08(木) 20:20:22.28 ID:lae4B1jRO
( ^ω^)「彼は大変彼女を可愛がりました。でも働きはしません」
「彼」は果たして「良い人」なんだろうか。
( ^ω^)「彼は……彼は……」
それでも、少なくとも、“彼女”に取っては、あるいは。
( ^ω^)「“それ”も所詮は一人よがり、かお……」
ほら、いつも通りのバッドエンド。
僕はスタッフロールも見ないまま、迅速に、それでも、たったひとつ、行動を起こしてから、眠った。
( ´ω`)「ん……」
窓の外は明るい。
雀の歌声をBGMに体を起こす。
BGMに混ざる雑音。着信メロディ。
どうやら、僕を起こしたのは、こいつらしい。
机の上にアンクレットがない事を疑問に思いつつ、携帯電話に手を伸ばす。
526 名前:( ^ω^)ブーンと不幸なアンクレット[] 投稿日:2007/02/08(木) 20:22:01.41 ID:lae4B1jRO
( ^ω^)「アンクレット……そう言えば昨日……」
『もしもし!? あ、あの“アンクレット”受け取りましたっ!!』
そう言えば、昨日のうちに警察に届けたんだっけ。
ようやく回り始めた頭を動かし、口を開く。
( ^ω^)「あ、あぁ持ち主さんかお? それは良かったお」
『ありがとうございましたっ!! 大事にしてたから、なくしちゃってどうしようかと……』
電話の向こうの彼女は確かに言った。
“良い人”に拾って貰えて良かった、と。
あぁ、そうか。
“不幸な少女”はいないんだ。
( ^ω^)「いえいえ。彼女を大切にしてあげて下さいお」
『彼女? それでお礼がしたいんですが―――』
適当に約束を交わし、僕はいつもより軽い足取りで家を出る。
向こうから幸せそうな少女が歩いて来る。手にはアンクレット。
(*゚ー゚)「お待たせしました……本当ににありがとうございましたっ!!」
天気は快晴。
僕は少しだけ控え目なハッピーエンドを向かえた。
―fin―
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