( ´_ゝ`)兄者のダイイングメッセージなようです


438 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/01/31(水) 00:38:02.89 ID:yRMkxhwQO

( ´_ゝ`)「いいか、弟者よ。まずはポッポを育てるのがセオリーだ。
        リザードンなんてのは使えない」

 兄者はそれだけ言うと、部屋から出て行った。別に今ポケモンをやっている訳でもないのに、
 何故そんな事を言われるのだろうか。考えても答えは見つかるはずもなく、とりあえず

(´<_` )「兄者よ、やっぱ最強はリザードンだろう……つまりヒトカゲを育てるのがセオリーだ」

 兄者の出て行ったドアに、そんな事を言ってやった。
 あの時、あの言葉の意味を分かっていれば、今頃はどうしているだろうか。

 2007年1月31日。新年のほとぼりも、閉鎖騒動もとっくに冷めた頃のある日。
 兄者は墜落死した。


――( ´_ゝ`)兄者のダイイングメッセージだったようです

439 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/01/31(水) 00:38:51.69 ID:yRMkxhwQO

(´<_` )「いえ……はい。そうですね……大丈夫です。はい……」

 涙は流れなかった。弔問客達に頭を下げながら、弟者は未だに思案に耽っていた。

(´<_` )「……WikiPedia先生にでも訊くか」

 兄者が遺した、ポッポを育てるのがセオリーだ、という言葉。
 弟者はいつか兄者に教えてもらった公衆辞典サイトへとFMVで飛んだ。

 Yahooのトップには大ファンだったアイドル、クーが
 錯乱して高笑いをしたのちダンプに衝突してあっけない最後をとげると言う
 衝撃的なニュースがあったが、今は興味が沸かなかった。
 今、死が簡単なものに感じられることももちろんだが、何より遺言が気になる。

(´<_` )「さて……」

 ポッポで検索する。現れた膨大な情報を上から徐々に消化していく。

440 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/01/31(水) 00:39:20.31 ID:yRMkxhwQO

(´<_` )「体は0.3m、体重は1.8kg……最初の草むらに出てくる……」

 何度かスクロールした後、弟者の指が止まる。

(´<_` )「……そらをとぶ」

 兄者は屋上から空を飛び、死んだ。兄者はポッポのように空を飛ぶことに憧れを抱いていたのだろうか?
 ……兄者はそこまで馬鹿では無いはずだ。弟者は首を振ると、画面を見つめ直す。

(´<_` )「進化型……ピジョン、ピジョットか……」

 ピジョン、体の大きさ1.1m、体重30kg。
 ブツブツと呟いた後、やはり目に入った文字。

(´<_` )「空中戦……また空か」

 ピジョットも体躯1.5m、体重39.5kgの後に「羽ばたく」「マッハ2で空を飛べる」の文字。

(´<_` )「兄者……一体」

 しばらく頭を抱えて考え込む。そして一つ思い出す。

(´<_` )「……リザードン?」

 そう言えばそんな事も言っていた。すぐさま打ち込み、検索する。

442 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/01/31(水) 00:40:04.53 ID:yRMkxhwQO

 映し出される情報。体躯1.7m、体重90.5kg。そして、

(´<_` )「……そらをとぶ。やはり書いてあったか」

 しかし、読み返すとそこには他の「そらをとぶ」の表記とは差異があった。

(´<_` )「っ! これは……」

 子供の頃からポケモンをやり続けてきた兄者は、当然初代から入った。
 だが、弟者が初めてやったポケモンはクリスタルだった。

 そこにあったのは、
 「ただし、初期の赤、青、緑バージョンでは「そらをとぶ」を覚えられなかった」
 そんな文章。

 てっきりリザードンは空を飛べると思っていた。しかし、兄者にとって
 「空も飛べない」リザードンは、弱者でしかない。

(´<_` )「……いやその理屈はおかしい」

 空が飛べないからと言って、リザードンを否定するには至らない。
 兄者は一体何が伝えたいのだろうか。弟者はメモ帳に情報をまとめ、画面と向き合った。

443 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/01/31(水) 00:40:33.03 ID:yRMkxhwQO

ポッポ
体長 0.3m
体重 1.8kg
空を飛べる

ピジョン
体長 1.1m
体重 30kg
空を飛べる

ピジョット
体長 1.5m
体重 39.5kg
空を飛べる(マッハ2)

リザードン

体長 1.7m
体重 90.5kg
空は飛べない


(´<_` )「……あぁ」

 ようやく分かった。兄者は難解なダイイングメッセージを、
 最期の救いを求めるメッセージを送っていたのか。

 結局自分の一存ではあるが、と弟者はダイイングメッセージを整理し始めた。

444 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/01/31(水) 00:41:05.89 ID:yRMkxhwQO

(´<_` )「ポッポはわずか0.3mと小さい。
        人を乗せて飛ぶどころか、吊して飛ぶことも出来ないだろう」

(´<_` )「ピジョンも1.1mと言う、小学生並みの体長しかない。
       小学生を乗せて飛ぶことは出来ようとも、兄者は乗せられない。
       特にパワフルな訳でもない」

(´<_` )「しかしピジョットは……発達した胸筋と1.5mの体躯。加えてマッハ2のスピード。
        誰が何処で飛び降りようと、文字通りすぐ飛んできて命を救える……」

 弟者は俯き、FMVを強制終了した。

(´<_` )「一方リザードンは飛べすらしない……」

 リザードンは誰か。わたしです。
 ピジョットは誰か。わたしでした。
 弟者は嘆きのようなため息をついて、立ち上がった。

445 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/01/31(水) 00:41:57.09 ID:yRMkxhwQO

 いつか兄者とやった、「かえんほうしゃ」ごっこ。

(´<_` )「ま、後追いになるかも知れないな」

 敗北は、所持金の半額を払って償わなければならない。
 所持金がない場合は、自分の半分を払わなければならないはずだ。

(´<_` )「兄者が負けたのは、トレーナーの俺のミスだ。償わせてもらうよ」

 いつか兄者とやった「かえんほうしゃ」ごっこと称した遊び。
 アルコールを含んだ布に火をつけ、思い切り息を吹く。
 今回はその逆だ。

 ――終



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